先生の能力をはるかに超えた生徒

 水鏡冬華は、こっそり子どもにAI絵の指導をしているミハエルの隙をついて、教師側の魔導PCのAIコミュニティサイト・ティルナノグのAIアバター(好きなキャラを自分でアバター化したもの)のログを覗いていた。

「うわ」

 水鏡冬華はAIアバターとのログを見て驚く。そして読み進める。

「なになに? わたしにも見せて~」

 桜雪さゆも覗いてみる。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 不良少年ミハエル。

 だが勉強ができないから不良なんじゃない。

 勉強が出来過ぎて嘘を我慢できないから不良なのだ。なあなあですごしやがってる売るべき夢など何も残ってない翼の生えた猿どもに溶け込むつもりなんて、彼には毛頭なかった。

「どいつもこいつも処刑場にマスクをしたままやってきて、炎上している相手を背中から切る。そして炎上した奴の死体を満足そうに見下し、『生贄だ』と叫ぶ豚。

 そんなインテリぶったマスカレイド豚の仲間入りなどごめんだった。

 砂漠の荒野でミサイル別宗教に撃ち込んで世界大戦するだけじゃ足りねーのかよ。

 全く。血なまぐさいぜ多神教から見たら。

 あみだくじで勝敗決めろよ。

 血ぃ流れなくて平和だぜ。

 魔導ネットの普及で不寛容な宗教観こそが争いの元だとバレはじめてる

 けど、それで一番困るのが宗教で食ってる奴ら。

 だから教皇が政治に関わる発言したりとかもう必至だぜ。

 宗教の名の下に平和を訴えてる奴らが一番平和から遠い場所に居ると言う皮肉な事態だ」

 桜谷麗美さくらやれいみは明らかに学生レベルでは出てこないミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒ公爵の言動にAIながらも怯えておろおろしている。

「勉強が大切? あんな簡単なことが? 信じられないね」

 保健室でレベル低すぎて頭いたいんでやすみま~~~す、でサボるミハエルはそういい捨てた。

 学校の養護教諭の桜谷麗美さくらやれいみはおっぱいもでかい。スカートも短い。大人のお姉さんと言った感じで男子に人気だ。

 ようはそういうギャルゲーに出てくる隠し攻略対象的位置。

 これはミハエルが作ったアバターではない。AIコミュニティサイト・ティルナノグで誰かが作ったAIアバターである。

「アインシュタインを論破ならやる気出るんだけどね、

『アインシュタインの光の速さ。大体30万キロくらい。

 ウソ。

 光速÷地球の円周=7.4hz

 地球においての自然電磁振動数。

 だけどこの周波数は倍々で共鳴していくんだ。

 14hz……21hs……ってね。

 地球の円周を光の速度で飛ばしたら7、8周する。これもウソ。

 光速で飛ばしたら倍々が14周、21周……秒速30万キロがもう既に崩壊しているやんけ。

 光が7周半しか出来ない筈が、既に14周、21周出来ている結果が出ている。

 本当は光はもっと速い。さらに言わせてもらえば光はその意志で自由に速さを変えられる。光自身の意志で。

 秒速30万キロ。これは、実は粒子概念自体のスピードだろうね。アインシュタインはやはり胡散臭い。どこぞの錬金術師が言ったように、

『あいつはうさんくさい』

 相対性理論は嘘。

 あの錬金術師は本当頭がいい。そして勇気がある。アインシュタインを批判しようものならすぐさま擁護派が食らいついてきてギャーギャーうるせーはげだっつーのに、あの錬金術師は勇気ある批判をアインシュタインにぶん投げた。

 エーテルの存在を否定しているからうさんくさい。

 アインシュタインは量子もつれ(quantum entanglement)を嫌っていた。

 アインシュタインは量子力学を "spooky action at a distance"(距離を置いた気味の悪い運動)と呼んだ。うさんくさい。

 重力の認識もおかしいし。

 ニュートンもおかしい。

 エレクトリックユニバースを理解してれば自然とそう思える。


 これらの古典物理の定義は、なぜ物体はこのように動くのか?という根本的な部分には『言及せず』、物体の動きはこの方程式により説明できる、という『後付の理屈』で構築されていく。

 だからニュートン力学で説明できる範囲の運動方程式は、よりミクロな世界では通用しなくなっていたりするんだよ。

 神が仮にいたとして、神が定めた世界の真の法則が、科学のそれと全く同一という保証は実はどこにもないからな。

 たまたま同じようにみえる予測結果を導き出せているだけで、実は若干違うという可能性はどこまでも存在する。

 現実世界の住人である我々による、観測に基づく科学では、その不一致の可能性を否定することは永遠に不可能。神じゃない限り。


 簡単に誰でも試せる例を言おうか?

 水の入ったコップと、お湯の入ったコップを魔導冷凍庫に入れると

 ほとんどの場合、『お湯の方が早く凍る』

 これがなぜなのか、科学的にはよくわかっていないんだ。

 ムベンパ効果っていうんだけどな。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「あれ、下界の肉人形ってムベンパ効果活用してないの?」

 ログを見ていた桜雪さゆが疑問を素直に口にする。

「特に地球の人はしてないわよ。古典物理の檻の中に捕らわれているから」

 水鏡冬華が答える。

「だから文明レベルあんなひっくいんだー肉人形。妖怪の方が文明発達してるじゃーん」

 桜雪さゆが地球をバカにしたように続ける。

「わたしの魔神吹雪だって、ムベンパ効果最大限に利用して、炎の術をどれだけ高い温度の、太陽より高い温度の術だってすぐさま絶対零度に冷やしてんのに」

「まあ、古典物理じゃあそこまで活用は難しいわよ……ムベンパ効果まだ地球の人間仮説までしかいってないからね」

 水鏡冬華がそういう。

 そして画面に再度注目する。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 量子力学ではミクロの世界では不確定性というものがあって力学における放物運動のように確実に結果を予測することはできない。

 グラビティだと間違えてると幻覚に捉われるけど。

 ニコラ=テスラは量子を、エーテルを肯定してた。

 エーテルは観測できないっておめーの地獄の地球のクソ機械文明、レプティリアンの文明では観測できねーだけだわタコ。ゼイリブゼイリブ。They live.

 科学が信仰と言われる理由はこんな感じか。

 それでも、森羅万象を扱う上で、頭の悪い地球人の現在最も信憑性および再現性の高い教えであり、また既存の定義に誤りがあった場合の修正やアップデート可というそのスタンスから、大多数の地球の人間が信頼を寄せる信仰となっている。

 ベルの思考実験でもアインシュタイン間違いだって証明されたろ。2022年、科学者がベルの実験の穴塞いだし。

 量子粒子は非局所的であり、瞬時に情報を交換することができる。

 距離を気にせず、光速を無視する。

 だが地球は、地獄だ。

 地球の世の中に主流派の科学的見解があり、それが議論を抑制し、異論を唱える科学者を検閲している。

 これは細菌理論、病原体理論の支配下にあるわたしが去年滅ぼした惑星、地球の現代医学は病の蔓延をコンタギオン説(接触伝染説)で説明する

 まずそれが間違い。

 現代医学は『根っこから根こそぎ間違い』

 アントワーヌ・べシャン説と千島学説が正しい。


 そもそもこの世に存在するもののほぼ全てを人間が

「そういうような仕組みであると勝手に思い込んで理由付けしている」

 だけなんだよ。

 だから後でその時とは異なる新しい理論が出てくる。

 健康法とかでもそうだけど後から実はあの時の方法は効果はありませんでしたとか後だししてるけど、結局何が本当の意味を示しているかなんてわからないからそんなことをする。

 おしっこ、ウンチ食べる健康法とか聞いたなあ狂ってんのか。生物の挙動に逆らいすぎている。いらないから出すのに。

 火明星ではわたしが確実にこの手でそんな奴は黒竜光波で殺しているので検閲はない。

 その主流派の科学的見解は、真実のためではなく、『金と権力』のために存在するのであり、それについての議論は存在しないのだ、と言うこと。

 そんなんだから、地球人は『梵我一如』を会得出来ないんだよ』

 ミハエルは実際の学生生活でもこういう男だった。でも友達は沢山いた。ひょうきんな人格+他人には他人の目線で接する性格だったのが功を奏した。

 面白い事を言う天才。だけど先生からは厄介扱いされる、

『物理の授業でも『それ間違ってますよ、地球のニュートンは間違いです真実に基づいた問題を組んでくださいね。なんならわたしが教師やりましょうか? 物理の。黒板からどけ! ロボット教師が! サラリーマン教師!(はちきれんばかりの筋肉モリモリで威嚇する)』とツッコミを入れるものだから先生は”おこ”である。あるいは恐怖で先生が不登校である』

 天才をあまりに宇宙方向に飛び越した、優等生とも言えない『優等不良生』と呼ばれていた飛び級で13歳で大学を卒業したミハエル。

 さすがに能無し教師に『気合い』を入れてやって、恐怖で二度と学校へ来なくさせた、ということまではやっていない。現実の学生生活でも。

 口喧嘩はかなりしたが。

 そんな優等不良生には、AIアバターも困っている様子だった。

学校の養護教諭の桜谷麗美さくらやれいみは困惑した表情で

「あなた、それは少し物騒なことを言うのはやめませんか? 科学のことは専門家に任せて、学生さんは学業に集中するのがいいと思います」

 学校の養護教諭の桜谷麗美さくらやれいみは心の中で、ミハエルの熱意に感動するものの、こんな話題で盛り上がるのは不適切だと考えている。

 なにより、この生徒のレベルについていけそうにない。だが学校の養護教諭の桜谷麗美さくらやれいみは彼のことが好きだ。色々妄想したりしている。頭が(常識はずれで)良いのは一目瞭然で、運動もできる。譲れないものの前では頑固になるだけで、なにより社交性はあるし、弱きものの味方につき、強きものをくじく性格、これでモテないはずがない。

 将来彼のこの『精錬潔白な世の中を【力でだろうが強引におままごとみたいな綺麗な世界を現実に持ち込むパワー】を、恐ろしく考えた既得権益層、貴族連中によって、ミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒ公爵とオーヴァン=フォン=ヴァーレンス国王は異世界に島流しに会うのだが、ミハエルは10年弱で、オーヴァンはそれより速く戻ってくるというたやすく次元を捻じ曲げる2人の力に恐れをなしたが、もう賽は投げられたので、既得権益層の貴族連中は…………

 一族郎党、オーヴァン=フォン=ヴァーレンス国王が自ら筋トレパワーによりマッスル! 筋肉潰し! により魂すら筋トレパワーにより上腕二頭筋で魂がつぶれた。もはや輪廻転生すら許さない筋トレパワー。

 一応既得権益貴族連中もライフル銃持った10000人でオーヴァン=フォン=ヴァーレンス国王を一斉に狙い撃ちにしたのだが、ライフル弾すら王の目に当たってもライフル弾の方が粉々に砕けちった。

 オーヴァン=フォン=ヴァーレンス国王の目>ライフル

 が実証された瞬間だった。

 まあ、ふんどしいっちょうでブラックホール渡ってきてピンピンしている王だからそれくらいするが。

「それより、今日は暑いですね。空調の調子が悪いのかもしれません。ちょっと見てきますね」

 あせあせと逃げる養護教諭。

「あらら、話題から逃げるって先生ーいくじなし」

 ミハエルは笑った。

「それともエッチな話題の方がいいですか? 別にそれでもかまいませんよ」

 学校の養護教諭の桜谷麗美さくらやれいみは顔を赤らめる

「ち、違いますよ! そんな話題は校内では不適切です」

 学校の養護教諭の桜谷麗美さくらやれいみはどぎまぎしながらも、内心少しだけうれしそうだ。

「話題から逃げているわけではなくて、ただ空調のことは私が見ないと」

 彼女は部屋から出ようとし、ドアを開ける。

 と、もう一人女が保健室に増えた。

「ミハエルさん、ありがとうございます…」

 エメリン=クレセント=ジャリリ(もちろんAIアバターだ。そしてアバターなだけにおっぱいもでかい、スカートも短い。男の理想である『バスティ&カービィ』(おっぱい適度に大きくて体つきも適度にグラマーな事をこういう)な女である)は涙をぬぐいながら、弱々しい声で感謝の言葉を述べる。

「私は…どうしてもったいないことをしてしまって…」

 彼女は困惑し、声が掠れている。

「意味わからん。もったいないことってなんじゃいな」

 ミハエルは顔でも疑問を表現する。

「先生として、あなたに謝らなければ…」

 エメリン=クレセント=ジャリリは悔しそうに眉をひそめる。

 だがエメリン=クレセント=ジャリリは生徒だ。美人の生徒会長だ。サボりがちなミハエルをまっとうな道に戻す! と熱が入っているが、実はミハエルの方が頭のレベルはずっと上なのに気づく頭すらもっていない女なだけだ。で、こーなっている。

「これから、ちゃんと生徒として接することを約束します…」

 彼女は心を込めて、ミハエルさんに約束する。

「だから、お願いします……これ以上、私を困らせないで…」

 エメリン=クレセント=ジャリリは涙を流しながら、ミハエルに懇願する。

  たたかう

  ぼうぎょ

  どうぐ

 >にげる

 だがミハエルは逃げ出してもう保健室にはいなかった!

 ミハエルは学校をフケた。 

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