第2話 出張ネイル
「「「ようこそお越しくだいました!!」」」
や、やばい…。
本当に来てしまった…。
しかもなんか20人ぐらいに迎えられている。
とりあえず雰囲気的にすぐに殺されたりとかは無いと信じ挨拶をする。
「本日はご予約頂きありがとうございます。出張ネイリスト爪美キララ(そうびきらら)です。ネイルはここですればよろしいでしょうか?」
「そうです。必要な物はありますか?」
「お互いの手が届く大きさの机と椅子2つお願いしたいのですが…」
「すぐに準備致します!」
机や椅子を準備してもらい準備が整ったので持ってきている材料等をテーブルセッティングしていく。
そして準備が整い、まずはジェルネイルについての説明をする事に。
「まずはじめにジェルネイルについての説明を致します。ジェルネイルとは持ちが約3,4週間持つネイルとなります。そして取り外す時はオフ剤が必要となりますので簡単に取り外す事は出来ません。また無理やり取ろうとすると自爪を傷めてしまうので無理やり取らないようにお願い致します」
簡単な説明をしネイル施術に移る。そしてまずはどなたがネイルをするのかを聞く。
「ではまず効果を確かめるために私から行こう」
そう言って出てきたのは大男だ。
身長が2mぐらいありムキムキの男性が名乗りをあげた。
少し戸惑いつつも対面で座り、どんなネイルをしたいのかを聞く。
「効果を確かめるために1本ずつ塗って頂きたい」
先程からチラチラ聞こえる効果とは?
めちゃめちゃ気になるが、この状況にビビって聞くことが出来ず、どの色が良いかを聞くのが精一杯だった。
色を聞いたが、それも効果を確かめるために1本ずつ違う色を塗るよう言われ、だから効果って何だよ! と心の中で叫びつつ「かしこまりました」と返す。
ここってどこ? とも何も聞けず、良く分からない状況だがしっかりと仕事をする。
「まずはジェルネイルを塗る前にケアをしますので、何本塗られるかは分かりませんが10本ともケアを致しますね」
そう伝え、プレパレーションというジェルネイルを塗る前のケアをしていく。
ケアが終わると男性がポオっと光った。
「おお! これは浄化ですな!」
…。
え? は? どういう事!?
浄化じゃなくてプレパだけど!?
いやいや、確かにプレパをしたら男性が光ってなんか着ているものとかキレイになった気がするけど!?
めちゃめちゃ戸惑っているが「続けてくだされ」と言われてしまい作業を続ける。
爪の油分を拭き、ベースジェルを塗り、なんとなくブルーのカラージェルを2層塗り、トップジェルを塗り1本を仕上げる。
色味はおまかせだったのでこの方に似合いそうな色からなんとなくブルーをチョイスしてみた。
「…いかがでしょうか?」
そう問い掛けると「試させて頂こう」と立ち上がり、指をパチンと鳴らした。
バシャ!
「うわ! ここまでか! この効果は凄いぞ! コップ1杯の水を出したつもりがしっかりと強化されて樽1杯の量まで膨れ上がったぜ」
えええええ!!!
ま、まほ、魔法!?
「さあ、次の指を頼む」
メイドさんが水を拭いているのを見ながら固まる。
「聞こえているかね?」
「し、失礼しました。次を塗りますね」
動揺が凄いが一旦考える事を放棄し、次の色を塗る。
無心で取ったカラージェルは黒だった。
そしてそれが塗り終わり、またパチンとやってへやがまっくろになり、めのまえがまっしろに。
私は気絶した。
はっ!!
なんかファンタジーな夢を見ていた気がする。
ベッドから起き上がると知らない豪華な部屋で、夢じゃない事に気付く。
…仕事の最中に倒れてしまった。
どうしよう。まずは謝罪しないと。
先程の男性の横にいた少し細めのイケメンが目に留まり、ベッドから慌てておりる。
「「大変申し訳ありませんでした」」
え? お互いに謝罪した?
「先程彼が使った魔法は闇魔法の一種だったのですが、ネイルを塗ったために魔力が上がりすぎて精神に作用してしまったのです。魔力の低い者はそれに耐えられず何人も倒れてしまい、貴方様も倒れてしまいました。大変申し訳ありませんでした」
「いえ、倒れただけの様ですし大丈夫です。豪華なベッドを使わせて頂いた様でありがとうございます」
「そう言って頂きありがとうございます。今日の代金のお支払いと次回の予約をさせて頂きたいのですが大丈夫でしょうか?」
「ええ、大丈夫ですが、1つお聞きしたいことがあります」
「なんでしょう?」
「あの、私の住む所では魔法が無いんです。この世界では魔法があるようですが、ネイルを塗ると何か効果があるのでしょうか?」
「ふむ。それについて説明致しましょう」
そう言って説明をしてくれた。
どうやらこのハーフムーン王国で魔法を研究している施設の最新の研究報告で、魔力は指先から放出されており、指先つまり爪に色を付けることや装飾する事により魔力を最大限に高めることが出来、魔法の質や威力も上がる可能性が高いとされたそうだ。
その研究では爪を植物で染めたら威力が少し上がったがそれはほんの僅かだったそうで、他の世界で爪を装飾する文化がある所を探した所、地球という世界の複数の国で爪を装飾する専門の仕事がある事を知ったそうだ。
そしてそのネイリストの中で、転移魔法で影響を受けない波長の持ち主を探した所それが私だったという事らしい。
それで予約をしたそうだ。
回線とか電波とか繋がるのか疑問だが、それを聞くと魔法で繋げれば出来るでしょと普通に言われてしまった。
よく分からないのでどんな感じで予約を入れるのか見てみたいと伝えると、目の前でやってくれた。
「まず、目の前に半透明の画面を出します」
??
「そしてここをタッチすると予約画面になります」
急に予約サイト?
「それで日にちや住所等を入力して予約完了です」
あ、予約完了してる…。
目の前でやってくれたが全く意味は分からなかった。
分かったのは2週間後の25日に予約が完了したということのみだ。
また次回も今回と同じように効果の検証をしたいということだった。
それと次回はフルタイムの10時〜18時で予約してくれていたが、そもそも私が使っている予約サイトはメニューで時間が決まる物なので、何故時間で予約できているのかは分からない。
多分聞いても分からないし、異世界だからという事にしておこう。
そして最後に今日の代金の精算だ。
実際2本しか塗ってはいないが、迷惑をかけたと言うことで規定分とプラスアルファで支払ってくれるということだった。
しかしこれも通貨や価値が違うし、そもそも持ち帰れるのか分からないしで支払いは何でも良いという事にした。相手におまかせだ。
異世界に来られたし、お金以上の体験をした気がするし、利益とかはどうでもよい。
その結果硬貨が入っている巾着を貰った。
結構重たいが、本当に貰っても良いのかな?
プレパレーションをして2本塗っただけだし。
多すぎると伝えたが、今後もお願いしたいしこの国の発展の為だから受け取ってくれと言うことだった。
有り難く頂戴する事にし、先程の部屋へ案内され片付けをする。
ふと、今何時だと持ち込んでいた卓上の置き時計を見ると時間は12時半だったので、まだ時間があるからネイルをするか聞くと、何人も倒れ騒ぎになったので看病やら報告やらでバタバタしているからもう帰っても良いとの事だった。
帰る準備を終わらせ、最後にここはお城なのか聞いてみると、やはりお城だった。
城内にある来客用の建物だそう。
どうやって帰れば良いんだろうと思った所で、転移陣の置いてある隣の部屋へ案内された。
そしてその中央に立つよう言われ指示にしたがう。
そしてさっきのイケメンを含む3人が呪文のような何かを唱えると景色が変わり、自宅に帰って来た。
◇用語集◇
プレパレーション:ジェルネイルを塗る前の下準備。爪の長さや形を整えたり、甘皮のケア、爪表面のツヤ取り等が含まれる。
ジェルネイル:基本的にベース1層、カラー2層、トップ1層の4層で仕上げる。1層毎にライトに入れ硬化する。
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