君と奏でたい

平本文

第1話

音が聞こえる。

ぽろぽろぽろ…。

ピアノの音だ。

井上望は音楽室をのぞいてみた。そしたらそこに、下級生がピアノを演奏していた。

「きれいな音色ですね」

望は言った。すると下級生は演奏の手を止め、

「ありがとうございます」と微笑んだ。

「お名前、なんていうんですか?わたしは井上望です」

「山下りなです。ピアノが好きで、毎日弾いてるんですよ」

「あの、室内楽部を作ろうと思ってるんですけど、一緒にやりませんかっ」

望は言った。室内楽とは、ピアノ、ヴァイオリン、チェロなどで構成される音楽のことだ。

「室内楽部ですか。合唱や吹奏楽じゃなくて?」

「はい。わたし、ヴァイオリンができるんです。あと、ヴィオラとチェロを探さないと…」

「楽しそうですね!やりましょう。ヴィオラの知り合いならいるので、声をかけてみることにします」

「ありがとうございます。それではこれからよろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

こうして二人は室内楽部員となった。

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