地下鉄

 地下鉄の車窓に、自分の顔だけが白く浮き上がっていた。


 明るい車内。乗客は、他にいない。

 次の駅は終点、等しく乗客の誰もが降りる駅。

 車両はそのまま車庫へ。その後のことは客は知る由もない。


 もしかしたら、地下の奥底に吸い込まれて戻って来ないのかもしれない。

 地下鉄の車両は、毎回新しく作られているのだ。


 そんな馬鹿げた妄想をして、一人頭を振ってみる。

 残業続きで疲れているのだ。

 早く家に帰って寝てしまおう。

 明日は早めの地下鉄に乗って、座って通勤するのだ。


 清々しい、まっさらな心持ちで。

 明日は今日より、良い明日。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る