風鈴が一つ、木枯らしに揺られてチリンと鳴った。

 窓は閉じられて、聴く者はいない。

 室外機が回り、風鈴を消していった。


 川原、すすきが風に揺れる。

 近づいて見るとすすきはとっくに、枯れていた。


 団地の廊下、一メートル。

 電球が切れている。

 誰も気にしない、終わり。


 球場のマウンド、自分だけが立っていた。

 観客は、居ない。

 暗い世界を、球場照明だけが照らしていた。

 影だけが、世界に貼り付いていた。


 振りかぶって、ボールを投げる。

 打ち返す者も、捕らえる者も、居ない。

 ただグラウンドを跳ねて、ころりと止まった。


 世界の端に止まったボールを、見つめていた。

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