第2話 スマートフォン

道行く人々がみなスマートフォンを見ながら歩いている。みな、ぶつからずに通りを行き交っている。しかしおそらく目に入っていないのだろう、彼らが歩く地面にはたくさんのお金が落ちている。その価値の暴落した紙幣の山を小人がかき集めている。彼らはそのお金を投資に回して、それで町を作っているのだ。

小人の町はすぐそこにある。町は立派なものだ。それは過去の人間の栄光が詰まっている。絹、ダイヤ、鉄、半導体‥‥。小人たちは過去を繰り返して、壊してはつくり、壊してはつくりしている。

その様子はカメラで撮影されている。しかも一つのカメラではない。何台ものカメラを使って、小人たちのつくった財産が撮られている。小人の中にはカメラマンもちゃんといる。

それは道行く人々のスマートフォンに映し出されている。人々は飽きることなくその映像見ている。そして映像を切り替えることもでき、自分が見たい過去の栄光を映し出すことができる。

つまりはすべては循環しているのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る