友達ガチャ
細川ゆうり
ガチャ…コトン。
中学生の間で噂されている都市伝説がある。
「深夜2時を過ぎてから回すと、“誰か”が
消えるガチャがある」
どこでガチャ現れるかは分からない。
古びた商店街か、ショッピングモールか。
深夜2時を過ぎた頃――どこかの角に、
見覚えのない黒いガチャ台が現れる。
商品名はいつも同じ。
『友達ガチャ』
カプセルは真っ黒で、何も見えない。
回した瞬間に、周りにいる友達が
一人ずつ消えていくらしい。
好奇心旺盛だった俺は、友達を連れて
その都市伝説を確認することにした。
⸻
金曜の夜。
僕らは肝試し気分で街をブラついていた。
「マジで出るんかな、そのガチャ」
笑いながら時計を見る。
2:07
気付いたら、目の前にあった。
黒光りするガチャ台。
誰も触っていないのに
取っ手がゆっくり動き始め、
ガチャ…コトン。
カプセルが転がり落ちる。
「やべ、本当に出てきた」
中には小さな紙。
こう書かれていた。
〈一回回すたびに、一人。〉
空気が凍った。
誰も動けない。
それでも――
好奇心に勝てない人間はいる。
「…回してみる?」
最初に手を伸ばしたのはユウキだった。
笑っているのに、指先が震えている。
ガチャ
落ちたカプセルを拾おうとした瞬間、
ユウキが消えた。
悲鳴すらなく、跡形もない。
ただその場に、転がったカプセル。
中の紙に書かれていた。
〈あと三回〉
僕らは逃げた。
走って、走って、走った。
でもガチャの“コトン”という音が追ってくる。
ひとり、またひとり――消えていく。
気づけば僕しかいない。
最後のカプセルが落ちた。
紙には、きれいな字でこう書かれていた。
〈あとゼロ回〉
助かった…?
そう思った瞬間、ポケットが震えた。
スマホの通知。
画面を見て、血の気が引いた。
通知は友達のグループチャットから。
⸻
ユウキ:『早く回してよ。君の番だよ』
ユウキ:『じゃないと、友達いなくなっちゃうよ?』
ユウキ:『ねえ…回したのは誰?』
⸻
画面が歪んだ。
黒いカプセルの表面みたいに。
僕の後ろで、聞こえた。
ガチャ…ガチャ…
コトン。
⸻
【終】
友達ガチャ 細川ゆうり @hosokawa_yuuri
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