第6話
封印巡礼【サダルメリク】の名は1002年を過ぎた後も各国の結界跡に現われた。
同時にミルグレン・ティアナの名は1002年を最後に歴史上からは消えて行くことになる。
1008年【エデン天災】が正式に終結した年に、亡国クレナド跡に建てられたクレナド大聖堂に破魔の弓を封じたという伝説が残っているが、これが封印巡礼サダルメリク・オーシェの名が歴史に現われた最後の記録と言われている。
以後――その名の行方は一切不明となった。
(だれが忘れても、絶対に私は忘れない)
(忘れないで、これからも貴方とずっと一緒に生きていく)
ミルグレン・ティアナ。
サンゴール王国に存在した【光の王】グインエルの姫。
彼女は生涯、光を失うことはなかった。
◇ ◇ ◇
なお、1010年に完成した【祈りの塔】、クレナド大聖堂は霧の氾濫から解放された世界にとって最初の新しい希望の兆しとなった。
苦しみを共有した人々は悲劇に見舞われたこの北の地に集い、
この歴史の暗がりに死んだ者達の為に祈りを捧げた。
1013年、この地を守り治めていたアレンダール聖教会の神官シザリオン・レナーテに対し【名主の旗】が送られ、その翌年の1014年に【クレナド聖護国】が建国された。
その初代の女王にはエデン聖教会、クレナド聖護国両議会において満場一致でシザリオン・レナーテが選定される。
【慈愛の女王】と呼ばれた彼女の傍らには、
近衛騎士団長となったマグノリア・ゴルディオンが生涯忠義を誓い寄り添ったという。
新しい光の女王の誕生に華やぐ北の大地で。
聖キーラン1022年、それまでの時代の寵児であったサンゴールの女王アミアカルバが病により崩御した。
光を失ったサンゴール王国は新しい兆しすら見つけられないまま、女王の死から五年後内乱が巻き起こり、そのまま滅亡の一途を辿ったのだった。
【聖キーラン歴1027年 サンゴール王国滅亡】
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