第8話 紗奈Vs.誠 (ルナVs.テト)
広間の真ん中に立つ。こうやって二人で向かい合って正式な模擬戦をするのは始めてだな。
「せっかくなので、勝ったほうが負けた方になんでも一つお願いをできるというのはどうですか?」
「いいな、それ。じゃあ、受付嬢さん、合図お願いします。」
これはなんとしても勝たなければならない。負けたら何をさせられるか分からないし。
「はい。それでは。3、2、1、始めてください。」
二人同時に地面を蹴り、刀を抜き放ちながら真ん中へと向かい、刀を打ち付けた。即座に魔法陣を描き、至近距離で魔法を放つ。
「
「
お互いの超威力の魔法が炸裂し、一気に距離を取る。
「やりますね。」
「やるな。」
想像以上に強い。味方に周れば頼もしいが、敵になるとこうも厄介なのか。そもそも、僕と紗奈では刀の腕ではあまり差がなく、魔法の威力もそこまで差はない。お互いに最高火力の魔法はこんな戦闘中には使えない。
「降参してもいいんだぞ?」
「そっちこそ、私に倒されてプライドズタズタになっても知りませんよ?」
ふたたび二人がぶつかり合う。鍔迫り合いの中で魔法を打ち付け、距離を取る。
このままだと埒が明かないな。
「仕方ないので見せてあげますよ。この黒銀刀の本物の力を。」
「え゙っなにそれ。」
そう言って紗奈が鍔迫り合いから離れる。今までの流れからはここで魔法を放つので、取り敢えず魔法陣を描く。
「
なぜか、紗奈が近づいてきた。そして、俺の雷撃砲を斬る。
「はっ?」
魔法を斬るってどういうことだよ?意味がわからん。物理的に無理だ。
「フフフッ驚いていますね、誠くん。私が何の変哲もない刀を作ると思いますか?この刀の真の能力こそが、この魔法を斬るというものです。誠くんも一緒に魔法陣を作ったのだから分かりますよね?魔法に対する魔力の供給源を斬っているんですよ。」
「そんなことが…」
確かに一度そのことを考えたことはある。しかし、僕にはできなかったのだ。
「どうやってそれを…」
「教えてあげませんよ。誠くんにまでこれをやられたら私の勝ち目がなくなってしまいます。ですが、誠くんはむしろその魔法でゴリおす戦闘スタイルを崩すとむしろ弱くなってしまうかもしれないのでやらないほうがいいですよ。さて、どうしますか?降参しますか?」
「くっ、僕は、今回の戦いだけは勝たなければ行けないのだ…。」
まだ諦めない。魔法を放つため、魔法陣を展開する。
「
「無駄です。」
斬ッ
斬られる。
「
斬ッ
また斬られる。
また、また、また…
首筋に刀が突きつけられた。
「ま、け、ました…。」
「ふふふ。私の勝ちですね。では、お願いは考えておくので覚悟しておいてください。誠くん。」
「お、お手柔らかに。」
「それはどうでしょうね。」
「紗奈さんって結構S気質あるよね?」
「まさか。私にそんなものはありませんよ。」
絶対紗奈さんはどSだ。2年間見てきたが、たまにこういう一面をみせる。
「それで、受付嬢さん。ルナもこれで合格ですか?」
「あ、は、はい。合格です。それではカードを持ってくるので受付にてお待ち下さい。」
言われた通りに受付に戻ると、ギルドは異様な雰囲気に包まれていた。
「紗奈、どうしたんだろう?」
「恐らく、私たちの試合を観ていたのではないですか?たぶん途中から人がいたと思います。」
「マジか。気づかなかったな。」
「そりゃあ誠くんは試合に集中してましたしね。」
しばらく会話をしていると、さっきの受付嬢さんが歩いてきた。
「あ、あの、ギルマスがルナさんとテトさんとの面会をしたいといっておりまして、ついてきてくださいますか?」
「あ、はいわかりました。」
受付嬢に案内され、ギルドの奥へと入っていく。
「おう、来たか。」
中では鋭い眼光を放つ老人がいる。白髪ではあるが、かなり強い気配をまとっており、僕ではまだ勝てないだろう。
「さて、まずはDランク試験合格おめでとうと言っておこう。それと、儂の名前はノア=セアドールじゃ。それでじゃな、お主らはかなり強い。だから、まずは特例でCランクから始められることにしようと思う。」
ラッキーだな。Dランクは一ヶ月に一回以上依頼を達成しなければならず、少しめんどくさかったが、ベテランといわれるCランクからは一ヶ月に一回の依頼義務はなくなり、自由だ。
「それと、もう一つ言いたいことがある。まず、お主らウラノス魔法学院に入ってみぬか?」
「ウラヌス魔法学院?」
「ああ、王都にある魔法の名門校じゃ。お主らの年齢は見たところ16歳。儂が推薦すれば入ることができるじゃろう。もちろん、断ってこのまま冒険者活動をしてもよい。」
確かに、せっかく異世界に来たのだから魔法学院には入ってみたい。
「どうする?紗奈さん。」
「誠くんは入ってみたいのでしょう?まあ魔法学院なんてテンプレですし、単純に魔法が学べるのは良いことでしょう。」
「よし、じゃあ一緒に入る?」
「ええ、入りましょう。」
さすが紗奈さんは僕の心の中をよくわかっていらっしゃる。
「行くのはいいとして、どうやって行くんですか?」
「馬車で三日ほどじゃな。 」
「紗奈さん、僕が飛べばいいのでは?」
「誠くん、いける?」
「大丈夫だと思う。」
今の僕の魔力総量はかなり多いし、回復速度も割と早い。この世界の中でどのくらいかはわからないが。
「じゃあ、推薦入学してもらえますか?」
「いいだろう。では、王都でこの推薦状を見せるといい。中に入れてくれるはずじゃ。」
封のされた便箋を渡される。封には家紋らしきものが印示されている。
「ありがとうございます。それと、あまりお金がないので魔物の素材を売りたいのですが…」
「ああ、それならそこの受付で裏の倉庫に案内してもらうがいい。」
「それじゃ、ありがとうございました。」
受付から、倉庫へと案内してもらい、素材を出した。査定を終えると、
「さて、紗奈さんお金もゲットしたことだし、とりあえず今日は泊まって明日の朝に出発しようか。」
「そうですね。私はあまり喋らないので少し疲れましたし。」
「よし、じゃあ泊まろうか。」
歩いて宿を探しに道に出る。ちょうど道沿いに宿があったのでそこに入った。
「すみません、一泊したいのですが。」
「ああ、いいよ。ただ、今は部屋がベット二つの部屋が一つしか空いていないがいいかい?」
「えっと、紗奈さん?僕は別にいいけど、紗奈さんは僕と同じ部屋は嫌だよね…。」
一応紗奈に聞いておく。まあさすがに無理だろう。
「私は、別、に、いいですよ。そもそも二年間同居してたわけですし…」
紗奈が顔を赤くしながら言ってきた。
「え?いいの?」
「なんですか?誠くんはこの時間から別の宿を探せと?そんなに私と一緒に泊まるのが嫌なんですか?」
「い、いや、そんなことはない。」
紗奈に早口でまくしたてられた。膨れた不満そうな顔がかわいい。そもそも僕は紗奈が嫌いではないし、むしろ好意はあるので何の問題もない。
「じゃあ、さっきの部屋でお願いします。」
「大きなベット一つの部屋もあるがそれにするかい?」
「い、いえ先ほどの部屋でお願いします。」
ぶんぶんと首を振る。
「なんだい、意気地なしだね。男はもっとしっかりしなさい。まあいいよ。一泊銅貨7枚だよ。」
「はい、じゃあこれでお願いします。」
「ほい、これが鍵だよ。五ツの鐘が鳴ってから九ツの鐘が鳴る前なら提供してるよ。」
鐘はそのまま時間と一致すると考えてよさそうだ。
「それでは。」
階段を上って部屋へに行く。
部屋の中には
「「え?」」
てっきり二つのベットというから、二段ベットだと思っていたのだ。
「こ、これは、」
「どうする?今からでも宿を変える?」
「い、いえ、もう夜も遅いですし、このまま寝るしかないでしょう。」
「そ、そうか。」
二人してベットに入る。そもそもベットはくっついている。これおっきなベットと変わらないじゃん!
しばらくすると紗奈はすーすーと寝てしまった。警戒心なさすぎだろ。
「……………。」
「寝、寝れない。」
隣で紗奈さんが寝ていると思うとさすがに意識してしまう。
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