18.VS【チート・クラフト】の理
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【チート・クラフト】:レベル4
【ワールドチェンジ】
・RPG『マルクト戦記』レベル2
ワールドスキル
【通常攻撃】
【戦技】
【魔法】
・プチファイア
・ヒール
・キュア
・メテオレイン◀ ピッ
・ライトニングシールド
・氷獄の嵐ブリザード・デス
・炎獄の怒りヘルブラスト
【防御】
【換装】
【逃げる】
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数多の隕石がソルディア川流域に降り注ぐ。
まず、隕石の落下に気づいたのは【メテオレイン】を発動したオズワルド自身であった。
それは地上から見ればまだ小さな無数の光点でしかなかったが、かつて魔王クルエル・グリードが放った超遠距離範囲攻撃【コズミック・カオス・イグニッション】の初動に近かった。
天の彼方……大気圏外からの攻撃。
勇者とともに戦ったオズワルドがあの厄介さを忘れるわけもなかった。
対魔王戦では一度大陸ごと破砕されるも、妖精女王ティターニアによる大魔法【やり直し】と賢者クロノス・クリアノートの【空間転移】によって成層圏ごと転移させ攻撃を地表から逸らすことで事なきを得たが、この場に二人はいない。
まだこの時点ではオズワルド以外の誰もが頭上に落下する巨大な石つぶての存在に気づいていない。
戦闘中、不意に頭上に目を向けたオズワルドをルシアンが恨めしそうな目で見る。
(舐めやがって!)
しかし、ルシアンは動けない。
ルシアンはすでに攻撃した。今は彼のターンではなかった。
オズワルドはこれまでの経験から【メテオレイン】を大規模攻撃魔法と断定。
その攻撃範囲が自身が立つ地点を中心にして円上に展開していると予測。
幸い発動地点は境界だ。
戦争中の境界地帯にわざわざやってくる一般人はいないので、被害は限定できる。
だが、それでも人は死ぬ。
レティ、メル、ルシアン、境界防衛隊の面々。
隣領のグレイフォードの防衛隊も死ぬだろう。
ふと、前世の記憶が蘇ってきた。
人でごった返したゲーム開発室で黙々と作業を続ける前世の自分。
しかし、次の瞬間には皆いなくなった。
また一人になるのか?
また自分だけが生き残るのか?
残された時間はほとんどない。
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【チート・クラフト】:レベル4
【ワールドチェンジ】
・RPG『マルクト戦記』レベル2
ワールドスキル
【通常攻撃】
【戦技】
【魔法】
・プチファイア
・ヒール
・キュア
・メテオレイン
・ライトニングシールド◀ブブー!
・氷獄の嵐ブリザード・デス
・炎獄の怒りヘルブラスト
【防御】
【換装】
【逃げる】
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オズワルドは【ライトニングシールド】を発動しようとしたが不発に終わる。
そして表示されたエラーは……。
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すでに【メテオレイン】を唱えています
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やはりか…。
このままでは、あの天より飛来する超範囲攻撃が仲間を皆殺しにするまで、ルシアンにターンは移らない。
次にオズワルドが魔法を放てるのは、ルシアンにターンが移り、更にオズワルドにターンが移ってからだ。
もはや、オズワルドが相対しているのはルシアンではなく。
【チート・クラフト】という理そのものだった。
考えろ…。
前世で幾度となく唱えてきた言葉が、オズワルドの思考を澄ましていく。
・ルシアンに通常攻撃をし、強制的にターンを渡す
エラー、すでに【メテオレイン】を唱えたオズワルドは追加攻撃できません。
・ルシアンを挑発し、できる限り早く攻撃させる
リスク、ルシアンが攻撃する前に【メテオレイン】が着弾する可能性があります。
・戦闘を中断する
エラー、すでに【メテオレイン】を唱えたオズワルドはこのターン中に【逃げる】を選択できません。
……およそ、まともな手段ではクリアできない。
しかし、それがなんだというのだろう。
ゲーム制作ではそんなことは日常茶飯事だった。
・【チート・クラフト】の理の穴を突く
これまでRPG『マルクト戦記』発動中においてターンが渡ったケースは「攻撃した後」だけではなかった。
ダイアウルフとの戦闘中、オズワルドの通常攻撃の後、ダイアウルフたちは何もしなかったが、それでもターンはオズワルドに移っている。
だが、正確には何もしなかったわけではない。
「様子をみる」という行動を選択した結果、ターンはパスされ、オズワルドへターンが移っているのだ。
なら、どんな言葉ならルシアンを説得できる?
反骨心の強いルシアンに「様子をみろ」と言って言うことを聞くだろうか。
仮にルシアンが言うとおりにしようと思ったところで、破滅のつぶて降りしきる中で様子をみることがルシアンにできるだろうか。
何もしないということすら、ルシアンには難しいのではないか。
説得するか?
【チート・クラフト】の概要どころか、ターン制RPGの概念すら知らない、ルシアンにすべてを説明し、理解してもらい、ターンを渡させる。そんな方法が存在するとでも?
オズワルドは思わず笑った。
それは破滅の運命を嗤う、神の笑みだった。
前世でもこうだったような気がする。
何か指示を出しても、その意味を理解してもらえない。
時間をかければよかったのかもしれないが、そんな時間があったことなど、一度もない。
いつだってそうだった。
説得する時間すらなく「じゃあ、いいよ僕がやる」と、すべての仕事を巻き取って一人で解決してしまった。
だが、今回それは許されない。
【チート・クラフト】の理が、それを許さない。
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