猫好きは見るな
ミル
第1話 謎の猫
一気に冷え込み、タンスから冬服を
慌てて引っ張り出している人は多数いる。
川に入れば皮膚が突き刺すように痛くなり
真っ赤になるだろう。
しかし例年と比べるとこの急激な冷え込みは
おかしいと口々に言うものがいた。
ほぼ皆がが「地球温暖化の影響だろう」と
思い込んでいるが一人の学生、柊直人だけは違った
――この急激な変化はきっと別の「ナニカ」の仕業だと
直人はそう確信していた。
その「ナニカ」とは何か、
それは『妖怪』である
この世界には妖怪がいる。見えてないだけ
あのカップルの後ろにも、あの子供の後ろにも
そして…君の後ろにもいる。
…なんてね。それより…この猫、僕の膝から
離れないんですけど…!?
「あ、あのー…猫さん、ちょっとどいてもらってもよろしいです?膝が痺れてる、痛い…。」
「ンニャー」
しかしどく気はさらさら無いようだ。
黒と白が入り混じったきれいな黄色い目をしている
しかし何故だろうか、彼これ数分このままだが
本来ならば自分の体温と猫の体温が入り混じり
暑くなるはずだが…なぜかこの猫にはその現象はない。
それに今は真冬、白い息は誰だって吐く
しかしこの猫にはない。
「ど、どうしよう…このままだと帰るのが遅くなってしまう…」
「ニャー…」
「あっ、まって寝ようとしないで!」
ウトウトとし始めた猫を慌てるように起こそうとする
しかしこの猫はなんとマイペースなのだろうか
気にする余地もなく毛づくろいを始めた。
「あー…もう…!」
挙句の果てに僕はその猫を抱えていた。
道中何やってるんだ僕は…と思いながら家へ
フラフラと帰っていった。
※
「猫はどうするべきなのか」「猫好きの友達に育て方を聞くか」「そもそも野良猫?は先に病院に連れていくべきか?」など悶々と考えていくうちに
いつの間にか玄関前にいた。
とりあえず学生服の上を脱ぎ、シャツ1枚になった。
風がビュウビュウ服中シャツ1枚は本当に命取りにも程があると言っていいほど寒かった。
「さっむ…早く中に入ろう…」
凍える手でズボンのポケットをあさり鍵を出す。
そして脱いだ制服の上を猫にかぶせ見せないように
入っていった。
生憎母と父はいなかった。靴がなかったのだ
ホッと一息つくのと同時に肩を払う。
無意識に霊や妖怪がついてきたらたまったもんじゃない。
階段を念の為静かに登る。
キョロキョロ確認しながら部屋に入りとりあえず
一息つく。
被せた制服を取り外す。そこにいたのはヌクヌクと
温かさによって眠ってしまった毛並みの綺麗な猫
「(改めて見ると本当にきれいな猫だな。
本当に野良猫かな、誰かに飼われていたのかな?)」
ゴロゴロと音を立てながら眠る姿は可愛い…という感情に心が満たされた。
「あ、そういえば猫って餌、何が大丈夫で何がダメなんだろう?調べてみるか。この時間帯、猫好き友達はゲーム中だろうし」
そっと猫を置くとベッドに腰掛け、スマホを取り
調べ始めた。
『猫 餌 何がいい?』
「…なるほどなるほど?猫は…動物性のタンパク質を利用した栄養食…。つまり魚やお肉ってことか。
えーっと…?サーモンがいいのかな?
あ、じゃあお母さんに今日サーモンが食べたいって送ろ」
すぐにメールに切り替え打つ。
返信はないが既読はついた。
「よし、これでいいかな。」
スマホでやることを終え、スマホをとある機械に入れる。これ便利でさ時間を設定すれば中に入った物が密閉されて蓋が開かなくなるんだよね。
とまあ余談はさておいて、テストに向けて僕は
勉強した。今日は歴史を重点的にやるつもりだ
何十分、何時間とやった。しかし猫はこの時
起きてこなかった。
ご飯の時間となり、僕は下に降りようとする…前に
猫の生存確認をした。
「…大丈夫、生きてる。にしては寝過ぎじゃない?」
すると猫の目がうっすらと開いた。
その目はギョロッとしており少し不気味に感じた
…何故だかわからないが人の目にも見えた。
一瞬驚くが猫はまた目を閉じて眠りだした。
「……なんだったんだ、今の…。……もしかして」
嫌な予感がした。吐かない白い息、上がりもしない温度、人間ぽい目…。もしかしたらこの猫は――
「ちょっと直人ー?ご飯食べないのー?」
と、お母さんの声にはっと我に返った。
「(…いくら何でも考えすぎか、)ごめん!お母さん!今行く!」
とドアを開け階段を急いで降りた。
しかし…何かおかしい。ナニカに見られてる。
ばっと振り向くが特に誰もいない。
猫が起きてきた気配もしない。もしかしたらまた
妖怪を連れ込んだのかもしれない…(お母さんかお父さんが)
「はぁ〜〜…追い出すのは楽じゃないんだよなぁ」
と階段を早足で降りていった。
※
ご飯を食べたがサーモンは全部食べないようにした。
お母さんとお父さんが見てない隙をついて僕は
サーモンを小さいタッパーに入れた。
ご飯が食べ終わり一旦2階へ急いで行った。
ドアを開けると猫はまだ眠っていた。
「…ぐっすり寝てるなぁ。これ、サーモン。
キャットフードとかじゃなくてごめんね。」
と小皿を出して目の前にサーモンを並べる
しかし起きてこない。
「…じゃあ僕お風呂に入るからね。」と部屋を後にした。
猫はまるで見計らったかのようにギョロッと
目を開け、サーモンを眺めていた。
空気は冬の水のように冷え込んでいたのだった。
※
お風呂から上がり、2階へあがる。
ドアに手を掛け、扉を開けると
――今までぐっすり眠っていた猫がどこにもいないのだ
「あれ?猫は…?ドアちゃんと閉めたよね、?
……!あ、サーモンもない!」
キョロキョロと辺りを見渡す、しかしどこにもいない。
次の瞬間天井から黒い影が勢いよく現れた
「っ…!?」
思わず身構え、警戒すると
「いや〜、助かったわぁ〜、おめぇさん。
ありがとうなぁ」
と年老いた口調とは想像つかないような
猫耳生えた黒髪の女子高生が天井からぶら下がっていたのだった。
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