第26話 代打_宇治

試合は最終回。

宝塚シニア 0 - 3 藤本シニア 


ここまで俺はレフトで

フライを3つ処理。完全ノーミス。

チームも無失点。完璧な試合運びだ。

しかし、九回表――

ここで監督が代打を告げる。

「宇治、行け!」


「えっ…!?」と驚いた 表情の宇治。


そして俺の名前が呼ばれる。

「斎木、交代!」

胸がキュッと締め付けられた。

出たい。最後までやりたい。


でも――

俺はバットを宇治へ託し、

ガッツリ肩を叩いた。


斎木:「頼むぜ宇治。

 お前ならできるって。」


宇治は小さく頷いて打席へ。


――初球。

パァン!

乾いた金属音が響いた。

打球は鋭くライト線へ!


ファールラインぎりぎりに伸びる伸びる――

「いけぇぇぇ!!」


願いも虚しく、わずかに右へ切れた。

惜しい。

だがあの一打で、流れが完全に来た。

宇治はそこから粘る。


4球見逃して、カットしまくって――

ついにフルカウント。


相手投手が深呼吸。

宇治も大きく息を吸う。


渾身のアウトロー――

見切った!!


「ボール!!」


フォアボール出塁!

出塁した瞬間、宇治がガッツポーズ!

俺は思わずベンチ前で

飛び跳ねて喜んだ。


「ナイス!宇治!」

「最高だよお前!!」


ベンチ全員も総立ち。

空気が一気に沸騰する。

そして俺は

自分の胸に手を当てた。


(――俺が外された意味。

 わかってる。これは宇治に必要な打席だったんだ)


悔しさはある。

でもそれ以上に――

仲間が活躍して嬉しい。

心が熱くなった。

この一歩が

きっと大きな一歩になる。

そして試合は動き始める――。

――――――――次回へ続く――――――――

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