第18話 実力テスト

一年生――42人が整列していた。


「今日は一年生の実力テストだ。」


山根監督の一声で、空気が一気に張り詰めた。


(42人……バケモンみたいに多いな)

この大人数からAチームに上がるのはほんの一握り――それが新川中だ。



ホワイトボードに書かれたテスト内容。

《一年生実力テスト》

60m走

遠投

守備範囲テスト

バッティング

反応速度テスト


黒木が俺の肩を小突いてくる。


「斎木、走るの得意だろ?」


「いや……普通。」


「え?お前あんだけ練習やってんのに?」


(……いや、俺、長距離は得意だけどさ。短距離は別なんだよ……)


最初の種目。60m走

次々と一年生が走っていく。

早い奴は6秒台後半を叩き出す。

そして俺の番。

笛が鳴り、走り出す。


(……なんか、速くも遅くもない)


走り終わると、記録係が言った。


「斎木、タイムは……うん、平均ど真ん中。」

(……だよな)


黒木:「なーんだ、普通じゃん!」


「うるせぇ!」


遠投。


ボールを握り、全力で振り抜く。

ズバンッ!


「お、いい飛びだ!外野として合格点!」


(これは悪くない)

肩力の値は28にしたからこの結果には少し安心した。

黒木が後ろから覗き込む。


「俺より飛んでるな、お前」


「珍しく褒めるじゃん」


「俺肩弱いからな!」


(胸張って言うなよ…)



守備範囲テスト


コーチが高くフライを上げる。

身体が軽い。

短距離は普通でも、動き続けるスタミナなら誰にも負けない。


落下点へ素早く、確実に入り――

「ナイスキャッチ!斎木、守備は上手いな!」

周りもざわつく。


「外野の動きしてるな…」

「こいつ野球センスあるタイプだ」


黒木がニヤッとして言う。

「ほらな。打てなくても生きる道あるじゃん」


「誰が打てないだよ!」

(まぁ事実だけど……)


バッティングテスト


正直、ここが一番自信ない。

マシンから110キロが来る。

ビビるほど速くはないけど、得意でもない。

最初の球――

カキンッ(弱いライナー)


2球目――空振り。


3球目――ファール。

(……やっぱりダメだ)


最終的に、ミート率は下位グループ。打球速度も平均以下。

周りの一年生たちは前評判どおり打てるやつが多い。


黒木の番になると――


ドガァァン!!


ライトの奥まで持っていった。


「うおっ!?」

「一年であれはヤバいだろ!」


黒木はバットを肩に乗せながら言う。


「まぁ俺は打つだけが取り柄だからな!」

本当に打つだけの怪物だ。



反応速度テスト


ライトの点滅方向に素早く反応するテスト。

これは自信あった。


——ピッ(左)

「ほい」


——ピッ(上)

「はい」


——ピピッ(右→左)

「はいはい」


コーチ:

 「おぉ……反応速度、上位に入るぞ!」


(やっぱこの身体、ゲーム補正効いてる気がする)

黒木も驚いてる。


「お前、守備のために生まれた身体してるよな……」



テスト終了


42人全員がへばって座り込む。

山根監督が最後に告げる。


「今日のデータを基に、Aチーム・Bチーム・育成組を決める。

結果は後日発表する。覚悟しろ。」


全員がごくりと息を飲む。

黒木が不安そうに言う。


「斎木……俺らAいけるかな?」


「黒木は行けるだろ。俺は……わかんねぇ。」


バッティング評価は絶望的。

でも守備は光った。

走力は平均。反応速度は高い。

(どう判断されるんだろう……)

黒木が笑う。


「大丈夫だって。お前、守れる外野って貴重なんだよ!」


その言葉が、少し胸にしみた。

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