第17話 止まらない脚

新スキル

《無尽蔵体力》

効果はとんでもなく強い。

・練習の疲労増加

・練習で得られるポイントの安定

・体力の大幅向上

(疲労増えるって何だよ……)


そう思いながらも、胸の奥ではワクワクが止まらなかった。


次の日の練習


「一年生走るぞー!昨日よりペース上げるからな!」


山根監督の声は響き、グラウンドには朝日が差し込む。


普通なら、この声を聞くだけでやる気が吹き飛ぶだろう。

だが今日は違った。


——脚が軽い。


——呼吸が乱れない。


昨日と同じコースを走っているはずなのに、身体が勝手に前へ進む。

(まじか…これ《無尽蔵体力》の効果?)


黒木が横で言う。


「おい斎木、今日めっちゃ速くね!?なんだよその余裕!」


「ん?いや、昨日よりちょっと走りやすいだけ」


息すら乱れていない。

黒木はゼェゼェと苦しそうにしているのに、俺だけ違う世界にいるようだ。


黒木:「おまえ絶対なんかやってんだろ…!」


「いやいや、体が軽いだけだって。」

言いながら俺はスピードを上げる。

黒木の顔が引きつった。


「あ!?ちょっ…はやっ…!

チートだろ!チート!まてやァァァァア!」


追いつけないらしい。

俺だけ冷静だったのか、周りが笑う。




走り終えたあと、監督がじっと俺を見た。


「斎木、お前……走るの得意か?」


「得意じゃないです!むしろ苦手です!」


監督は腕を組んで、俺を上から下まで見てきた。


「その割にフォームが崩れん。

疲れが見えん。

一年生でこの走りは異常だぞ」


異常とまで言われた。

黒木が後ろから、


「監督、それ僕も思います!こいつ絶対なんかあります!」


「お前、それ絶対言い方おかしいだろ!」


監督は少し笑って、

「とにかく。斎木、いいスタミナだ。

この学校の野球は走れないと話にならん。

期待しているぞ」


期待されてる。

それだけで胸のどこかが熱くなる。


放課後、シニア練習


学校で走りまくったのに、身体がまだ動く。

まるでタンクが二つになったみたいだ。

シニアの監督にも言われた。


「お前、体のキレ良くなったな。何した?」

(ランニングです、としか言えねぇ……)


シニアのノックも、前より球に追いつく。

いや

ほぼノーストレスでノックを受けれるから、か

(これなら……新川中でも通用するかも)


少しずつ自信が芽生えていった。


夜、帰宅後

いつものようにデイリークエスチョンを進める。


今日は「打撃理論の知識判定」


知能ステータスが上がるタイプのクエストらしい。

クリアすると、通知が出た。


——《スキル熟練度が少し上昇しました》

——《無尽蔵体力》ランクアップまであと95%

(まじか、これランクアップもあるのか…)

毎日が変化だ。


新川中に来てまだ数十日なのに、景色が変わり続けている。


次の朝


登校すると、黒木がニヤニヤしながら寄ってくる。


「昨日さ、帰りに思ったんだよ。

お前、なんでそんなに走れんの??」


「……走ったから?」


「いやそれでそんな変わらねぇだろ!

絶対なんか隠してるよな!

……まぁいいや。とにかく今日も全力でいくぞ!」


黒木の明るさは、妙に救われる。

そしてその日の放課後。

俺は気づいてしまう。


——新川中野球部の練習、やばすぎる。


ランニング。

そしてまたランニング。

でも俺は動けた。

脚が止まらなかった。


(この世界、変わったのは俺の方かもしれない)


そう思った瞬間、

胸の奥がまた熱くなった。

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