第11話 落ち葉のように
まるで川を流れる落ち葉の様に翻弄される
「……本当はずっと前に分かってたんじゃない? 僕が成人するまで待ってたんだろ?」
ジュードの誕生日は今日だ。今日十八歳になった。この国の成人年齢。結婚も出来る。
「うちの親にそんな話持って行ったら大騒ぎになる。だから僕の成人を待ってたんだろ?」
「だろうな。僕が聞いたのはクリスマス休暇の直前だったけど」
ローガンに文句を言ったところで仕方ない。学校側の指示なんだろう。確かに、コール先生に騙されたけど、感謝もしてるし、犯罪者になって欲しいわけじゃない。
どうせ両親は僕の事なんか気にしない。ただ五月に家に帰ればいいだけだ。
「サインする。書類出して」
ジュードはローガンの持ってきた何枚かの書類に大人としてサインした。
「君が訴えなければ、コール先生は依願退職になって、先生を続けられる。他の学校で」
ローガンは窓の外にちらつきだした雪を見た。
「大人ってやだなぁ」
ローガンが言ったので、二人とも笑い出した。
それから、二人は学校や寮で起きた色んな事を思い出して昔話をしては笑った。
「君があんな風に居なくなるなんて、びっくりしたな」
ローガンは卒業式の直前にジュードに起きた変化のことを言い出した。
「アレのおかげで生活設計が丸潰れだ」
ジュードが忌々しそうに言うと、
「一人暮らしで自由になって、恋人とかできた?」
「暮らしていくので精一杯だよ。Ωって本当に大変なんだ」
「ジュード……君は……なんか綺麗になった」
ハッとした。
ジュードは少し窓の方に寄った。
「君が家に戻るまでの間でも、恋人として付き合えないかな?」
ローガンは席を立って、ジュードの足元に跪いた。
「ずっと一緒にいたのに、こんなに綺麗だなんて気が付かなかった。僕は、あれからあの日のジュードを思い出して、切なくなるんだ」
「は!? それ、セフレになってやらせろって事? 僕の
お前もかよ。五分前までの懐かしい気持ちを返せよ。βのくせにΩ味見しようとしてるんじゃないよ!
「それでもいい。本当に好きなんだけど、そんな風に思うならそれでいい」
「本当に好きなら“いつまで“とか言うわけないだろ」
後がなくなったローガンはジュードに襲いかかってきた。どうせもうこれっきりだから、と形振り構わない程だ。
本気を出せば、小柄で力もないジュードが敵うはずもない。一度蹴った足がローガンの脇に当たったせいで寧ろ火に油となった。
部屋のテーブルと椅子が倒れたが、結局、ジュードはローガンに組み敷かれた。
「放せよ、馬鹿野郎」
ベッドの上で、両手は纏めて頭の上でローガンの右手で押さえられ、腹の上に乗られている。
「綺麗になった、僕の知らないジュードを見せてくれよ」
「おい、何をしている!」
クリストファーがドアから勢いよく入って来た。体格も気迫もαに敵うはずもないローガンは荷物を持ってあたふたと逃げ出した。
ジュードは起き上がりはしたが、ベッドの上で座ったまま放心していた。
「怪我はない? 大丈夫だった?」
クリストファーの声はそれはそれは優しい声だった。
「Ωの心得の教科書、読んでおいて良かった。恋人じゃない誰かと二人きりになる時は、窓もドアも開けておけってあったから、少しだけ開けておいたんだ……。恋人じゃないから……友達だと思ってたけど」
力なく話すジュードにクリストファーは横に座って、肩を抱いた。
「君が来るかもしれないから、訪ねてきた彼と他のどこかで話をしたら、君と行き違ってしまうと思って……」
「うん……。下まで来たら、揉み合ってる音がしたから、急いで登ってきたんだ。ほんとは、明日にでも朝からゆっくり訪ねようかと思ってたのに、我慢できなくて。今日来てよかったよ」
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