とはずがたり
あざみ忍
第1話 新たな人生
11月22日、私は彼氏の家でゆったりとした時間を過ごしていた。
「ねぇ○○(あざみ忍の本名)、ちょっと良いかな」
「ん、な~に?」
「えっと、その……アレだよ! 昨日の新参者が最高だったんだよね」
「配信もあったんでしょ。私も観たかったのに」
ここで補足を入れるが、『新参者』とは坂道シリーズ(乃木坂、櫻坂、日向坂)の新期生たちが送るライブ公演である。
「リピート配信もあるから、それで観れるよ」
「そうなの? ならこれ以上のネタバレは止めてよね」
「了解」
「……」
「……」
「△△(彼氏の名前)、どうかしたの?」
「どうって?」
「さっきから落ち着きがないというか、何かおかしいよ。溜息も多いし」
彼氏との付き合いは、随分と長くなる。
「そっ、そうかな~」
つまり相手の癖なども丸分かり。こうやって彼氏が溜息を吐くのは、何か不安を抱いている時である。
「ズバリ、私に言いたいことがあるのに、うまく伝えられるか不安ってところでしょ」
私の指摘に彼氏は身体をビクッとさせる。本当に分かりやすい性格しているね。
「う~ん、○○(あざみ忍の本名)には敵わないなぁ」
「私に勝とうなんて、百年早いよ」
「仕方ない。僕も男だ、覚悟を決めるさ」
そう言うと、彼氏は1つ深呼吸をしてから徐に語り始めた。
「僕たちは付き合い始めて10年近くになるだろ。気付けば30代も半ば、ここで人生のターニングポイントを迎えても良いかなって思ったんだ。君は昔からあまり乗り気じゃなかったけど、僕はそろそろ新たな一歩を踏み出したい」
「……」
「僕と、家族にならないかな? ほら、今日は11月22日。良い夫婦の日だろ。だから――」
「うん、いいよー」
「ノリ軽っ、ていうかマジで?」
「マジだけど」
そんなのにも私の答えが意外だったのか、彼氏はまさに『鳩が豆鉄砲を食った』ような表情を浮かべていた。今思い出しても、面白い。写真のひとつでも撮れば良かった。
「本当に僕でいいの?」
「嫌だったら、そもそも付き合わないよ」
「そりゃ、そうかもしれないけど」
「私もね、そろそろどうかなって思っていたんだ。だから丁度良かったよ」
「そっか……」
「ところで、籍を入れる準備は出来ているの?」
「もちろん! 婚姻届もあとは君が書いてくれればOKさ」
「だったらさっさと書いて、役所へ出しに行きますか」
ということで、あざみ忍は新たな人生を送ることになったのでした。
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