第44話 魔王、人間界征服の決意を示す
「ドミネーション?」
「イエス。人間界を征服して統治することだ。」
人間界征服。
帝王学の教えによれば、それは口にすることすら禁じられている言葉。
「え?そんな話をしてもいいの?」
200年前の大戦争で魔界軍は人間界連合軍に負けた。その後、魔王軍は解体され、帝王学は勝者の都合に合わせて少々書き直された。特に人間界のことについて。
「怯えることはなかろう。人間界のバカどもはとうに『
しかし、魔王の帝王学の教師の中には書き直される前の『真の帝王学』をこっそりと教える者もいた。
人間界征服こそが魔王の使命であり、偉大なる魔族の力を世界中に見せつけられる唯一の方法だと。そのため、魔王軍を再結成し、戦争を続けなければならないと。
「でも、あたし戦争は嫌だし。」
魔王は授業に集中しながらも、あんな主張を聞くと怖くなった。
彼女は下を向いてスカートをぎゅっと握った。
「魔界のみんなも好きだし、人間界のみんなも好きだもん。」
夢魔はにっこりと笑った。そして両手を軽く二回叩いた。すると、ロビーは白い壁に囲まれ、高級感のある晩餐室に変わった。天井には煌びやかなシャンデリアが吊るされ、その下には円形のテーブルが現れた。
「我も『
それは嘘ではなかった。下級魔族は戦争で消耗品として扱われるだけ。夢魔も下級魔族である。夢魔は魔王の後ろに行き、肩を掴んでテーブルの席に座らせた。
「もし、戦うことなく人間界の『
「え?そんなことができるの?」
魔王は夢魔を見上げた。夢魔は魔王の小さい角を優しく撫でてから、向こうの席についた。
角の大きさを見れば下級魔族に違いないと、夢魔は思い込んでいた。
「『
200年前に人間界征服ができていたとしてもその利益は全部上級魔族たちの手に入ったはず。夢魔は人間界を下級魔族である自分の手に入れたかった。戦争でそんなことができるわけないってことを夢魔はちゃんと理解していた。
「そうなんだ。でもあたし、人間界征服には興味ないもん。今のままで平和だし、楽しいし。」
「人間界征服に『
「例えば?」
夢魔はテーブルに肘をついて手を合わせ、上半身を前方に傾けた。
「勇者がいなくなる。『
勇者がいなくなる!
その一文が魔王の心に響いた。そうならば、子供たちと遊ぶ時緊張しなくてもいい。
「素晴らしい屋敷、いや、『
魔王はそれもいいなあと思った。セナにシグリッド家みたいな屋敷をプレゼントすることもできるから。夢魔が侵入できないように、窓が一つもない建物を建ててあげるのもよさそうだった。
「『
美味しいものが食べられる。魔王にはもう考えるまでもなかった。
「あ…」
夢魔が説明する人間界征服があまりにも魅力的で、魔王は目眩がしそうだった。そのため声を出して肯定することも、頷くこともできなかった。
そしてまだ気に掛かることがあった。魔王にとって帝王学の教えは絶対。破ったらユーズに叱られてしまう!
まるで魔王の考えを読んでいたともいうように夢魔は付け加えた。
「汝も知っていよう。人間界に『
勿論、魔王は初耳だった。目を丸くする魔王を見て夢魔はニヤリと笑い、言い続けた。
「この『
つまり、最上級魔族である魔王が人間界に足を踏み入れた瞬間、それはもう戦争開始宣言に等しいことだった。魔王だと気づかれなかったためまだなにも始まっていないだけ。
だが、魔王は顔に不安の色も、恐怖の気配も浮かべなかった。あたしは魔王。上級魔族ではない!と思い込んでいたのだ。
「故に、我らが得るべき『
夢魔は最後の一言に特に力を入れて言った。それが一番重要な所だと思っていたのだ。しかし、魔王にそんなことはどうでもよかった。
魔王の頭の中では、ユーズは上級魔族だから人間界に来られない!じゃ、叱られない!という声が繰り返し再生されていた。
「あたし、人間界征服する!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます