第24話 悪の本拠地にはヤンキー聖女

魔王は教会の前に着いた。天を突く高い尖塔を見上げながら彼女はゴクリと唾を飲み込んだ。


「ここが悪の本拠地。」


周りは静かだった。中から賛美歌が聞こえて来るだけ。出る者も入る者もいなかった。今侵入するのは目立ちすぎる。魔王は一応茂みに隠れて様子を見ることに決めた。教会は敵のアジト。絶対バレてはいけない。

魔界で第三型の幽霊が出るのは大きな問題だった。それを倒すには聖水が必ず必要なのに魔界で聖水を作ることはできないからだ。魔族は自然と人間界の教会で聖水を盗んで使うようになった。そのため、帝王学には聖水の盗み方について詳しく説明されている。


「いつ終わるんだろう…」


勿論、いつ潜入すればいいのかについてもちゃんと案内されている。教会には定期的に礼拝という儀式がある。その礼拝と礼拝の間、休みの時間があって、人の出入りが盛んになる。その時人込みに混ざって入ればいいのだ。

カランカラン。

鐘の鳴る音がしたら、大勢の人が教会の外へと出て来た。暫くするとどこから現れたのか多くの人が教会に入り始めた。


「よし。」


魔王は赤いフードを被って人の流れに混ざり込んだ。


「神様の祝福がありますように。」


正門に近づいたら信徒たちに何かを配っている修道服姿の女たちが見えた。

「あれって、聖女かも…」


魔王は緊張してフードをもっと深く被った。帝王学によれば教会で一番危険な存在は聖女という。彼女らは心を見通し、穢れを払うと言われている。物理的な力も強くて勇者すら逆らえないという噂もある。だって、魔王城で大怪我して倒れた勇者が聖女の囁きで起き、戦い続けることはありきたりの話だから。多分、今戦わないと後で殺すと脅迫されたことに違いない。


「そこの姉妹。」


修道服姿の一人が魔王に声をかけて来た。魔王はそれを無視して足を速め、離れようとしたが、手首を掴まれてしまった。


「ヒッ!聖女に捕まった!」

「聖女なんて。とんでもありません!私ただのシスターですから。」


魔王はその言葉で勇気を得て、後ろを見た。若いシスターがにっこりと笑っていた。


「これ持って行ってください。」


シスターはずっしりした小さい袋を渡した。開けて見たら卵が一つ入っているのが見えた。


「秋祭り週間ですから。中に塩も入っています。殻を剥いて、塩につけて食べてください。」


帝王学って違う所もあるかもと、魔王は思った。教会は怖い所だとばかり言われていたが、怖い所で食べ物を配ってくれることはないだろう。


「ありがとう!」


魔王は礼を言って、また教会に向かった。歩きながらゆで卵の殻を剥いて、塩をつけ口いっぱいに頬張った。


「ケッ…!」


魔王はゆで卵を飲み込もうとしたが、のどが詰まってしまった。彼女は思った。油断した…帝王学は間違っていない。教会は危ない所に違いない。食べ物を暗殺に使うなんて。

息が辛くなった魔王は周りを見回した。人の流れの隙間から水飲み場が見えた。彼女はすぐそこまで走り、ゴクリゴクリと水を飲んだ。


「死ぬかと思った…」


落ち着いた魔王は教会の食べ物は二度と口にしないと自分に誓った。

とにかく、潜入までは成功した。帝王学に書かれている情報によれば、聖水は聖女の部屋にあるはず。聖女は礼拝に必ず参加するとも言うから少し待ってから行けば鉢合わせせず聖水を手に入れることができるかも知れない。問題は聖女の部屋が教会のどこにあるかだ。


「はあ、疲れた。教会なんか糞くらえ。畜生。」


教会の裏側で文句をいう声が聞こえて来た。今からどうするかを悩んでいた魔王は声がした所に近づいた。これは絶好のチャンスだ。内部に教会に不満を持っている者がいるのなら、魔族の手引きをしてくれるかも知れないから。

角を曲がって教会の裏庭に足を踏み入れたら金髪の美女がいた。彼女は正門のシスターたちのように修道服を着ていた。でも真っ白な服だったので少し特別に見えた。彼女は純白の服を汚すのも気にせず、紫煙を吐き出していた。


「せ、聖女?」


ヤンキー座りをして煙草を吸っていた美女は魔王の声を聞いて振り向いた。


「あぁ?」


眉間に皺を寄せる美女にビビッて魔王は固まってしまった。

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