第二章 出会いの記憶
「パパと出会ったときも、こんな夜だったの。」
ある日、母は焚き火を見つめながら話してくれた。
崩れた都市の外れで、ひとりの男が地面に倒れていた。
空気は焦げ、周囲の金属はまだ赤く光っていた。
その男は発火能力が暴走してしまい、誰も近寄れなくなっていた。
「近づくとね、息をするたびに喉が焼けたの。
でも、あの人の呼吸が途切れそうで……放っておけなかった。」
母はその夜、父の傍らに座り、手を当てた。
掌の下で、かすかに鼓動が残っていた。
彼女の力は自然治癒を少しだけ早める。
体内の熱と血の流れを整え、傷の修復を促す。
普段は薬草と手当で十分だが、あの夜は違った。
男の命は消えかけていた。
「消え入りそうなくらい弱っていたけど、命の火はまだ消えてなかった。
だから、それを邪魔しないように、呼吸を整えてあげるの。」
父は目を開けた。
火の熱は消え、頬に冷たい風が当たった。
「……火が止まった。」
「ううん、あなたが止めたの。私は少し手伝っただけ。」
それが、二人の最初の会話だった。
焚き火の明かりの中で、風がやさしく通り抜けていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます