第二章 出会いの記憶

「パパと出会ったときも、こんな夜だったの。」

ある日、母は焚き火を見つめながら話してくれた。


崩れた都市の外れで、ひとりの男が地面に倒れていた。

空気は焦げ、周囲の金属はまだ赤く光っていた。

その男は発火能力が暴走してしまい、誰も近寄れなくなっていた。


「近づくとね、息をするたびに喉が焼けたの。

 でも、あの人の呼吸が途切れそうで……放っておけなかった。」


母はその夜、父の傍らに座り、手を当てた。

掌の下で、かすかに鼓動が残っていた。

彼女の力は自然治癒を少しだけ早める。

体内の熱と血の流れを整え、傷の修復を促す。

普段は薬草と手当で十分だが、あの夜は違った。

男の命は消えかけていた。


「消え入りそうなくらい弱っていたけど、命の火はまだ消えてなかった。

 だから、それを邪魔しないように、呼吸を整えてあげるの。」


父は目を開けた。

火の熱は消え、頬に冷たい風が当たった。

「……火が止まった。」

「ううん、あなたが止めたの。私は少し手伝っただけ。」


それが、二人の最初の会話だった。

焚き火の明かりの中で、風がやさしく通り抜けていった。

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