第3話 ソライシの使い道
このソライシは塔に入るだけの為に有る訳では無い。
この星のソライシを納める公的施設があって、役人にどの様な対価を求めるか交渉出来る。
少量では話にならないが、一定量を満たせば何かしらと交換してもらえる。
規模の大きなギルドなんかは生きて帰ってきた話を聞かない塔に入る事は目的とせずに例えば近場の星位なら行ける様な宇宙船と交換したり…
この宇宙船を元に観光事業なんかをしているギルドもある。
ただ、外宇宙に行ける範囲はこの星の法律で限られていて、せいぜいこの星から見えて居る2つの月位までしか行けない。
滞在出来る期間もほんの僅かでせいぜい長くて1日位しか許されていない。
宿泊は宇宙船の中のみだ。
月に降り立つ事も許されていない。
それでも短い人生で魔物と戦ったりでない安全な冒険をしたい人もそれなりに居て、高額な旅行代金を払っても行きたがる人も多い。
長生き出来ないのに、そんな事業をして金を貯めてどうするんだろと他人事ながら呆れていた。
ナミから聞いた噂では宇宙船を改造してワープ機能を付けて遠くの外宇宙まで行った奴もいるらしい。
ただそいつも塔に入った人間と同じく帰って来なかったので、遥か遠い宇宙の先がどうなっているのかは知る由もなかった。
塔にもだが、知らない外宇宙にも憧れる。
ただ、俺では生きている内に宇宙船と交換出来るようなソライシを集めるのは無理だろう。
高い金を払って宇宙船の中だけの月見学もしたいとは思わない。
「マスター!今日は水色ー!」
ミルハが小さなソライシを持ってやってきた。
「頑張ってるなー!でもコイツは6等級だからこれだけだな。ゴメンな。」
そう言って報酬を渡して頭を撫でてやるとミルハは尻尾をふるふるさせた。
「えへへ、次はもう少し頑張るー!」
「まだお前は子供なんだから危ない所には行くなよ。出来る範囲でいいからな。」
「マスターの夢が叶う様に頑張るー!」
そう言ってミルハは無邪気に走って行った。
俺は何故かここに来る子供達に懐かれる。
親がいない子も多いから、皆は俺を親代わりに思っているのかも知れない。
俺は…
心が欠けているのに…
「マスター!今日はね、黄色いソライシ見つけたよー!」
「これは中々貴重だな!等級3だ!よく頑張ったな、ナハカ!」
頭を撫でてやるとナハカは嬉しそうにはにかんだ。
弱小ギルドながらも着々とソライシが集まっている。
ただ、ソライシは買い取りなんで、ソライシ以外の物も集めて売買をしている。
例えば使わなくなって捨てられた機械や家庭用ロボットとか。
多少修理も出来るので、直して転売したり。
後は子供に文字なんかを教えて勉強代を親から貰ったり。
そう言うツテもあるので、自然と子供が集まってくる。
昔教えていた子の親が死んで孤児になった子が売りに来たりもする。
そう言う事もあって自然に俺も子供の扱いが上手くなって行ったのかも知れない。
「今日はマスター、遊んでくれる?」
「うん、良いよ。ナハカは頑張ったからなあ。でも皆には内緒だぞ。」
「うん!やったー!」
「お菓子もあるからな。」
「わーい!嬉しい!」
そう言ってギルドの奥にある自室に入れてやった。
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