第11話 10話の内容が間違っていました。謝罪します。
押さえていた殺気をわずかに開放した。
刹那、男は全身を硬直させて白目を剝きながら気絶した。
ズボンの中を排泄物でいっぱいにしながら、動かなくなった姿は、まさに汚物そのものだった。
◆
真緒姉の荷物と一緒に自宅へテレポートで帰還。
俺はお姫様抱っこから彼女を下ろすと背中を向けた。
「怖い想いしたろ? クロエ、真緒姉をお風呂に入れて上げてくれ。俺はコーヒーと甘いものを用意する」
「その程度なら他のメイドに……いえ、無粋でしたね」
クロエは棒読みボイスをわずかに緩ませた。
「ありがとう、弟ちゃん。なんだか恥ずかしいな。あたし、お姉ちゃんなのに」
真緒姉は誤魔化すように苦笑を浮かべて視線を伏せた。
だから俺は肩越しに小さく笑った。
「そのことなんだけどな、異世界で暮らした五年を計上すれば俺のほうが年上なんだなこれが」
「えっ、なにそれズルイっ」
パッと顔を上げて、真緒姉は俺の肩をつかんできた。
「それなしなし! ノーカン! 弟ちゃんは年下できゃダメなんだから!」
どういうこだわりだ?
でも元気を出してくれたおかげで俺の笑みが深まった。
「OK、つまり俺は永遠の18歳で姉ちゃんは永遠の22歳だな? これから毎年若返りポーション飲もうぜ」
「え、あ、せっかくだからもうちょっと若返りたいかな」
赤面の前で左右の人差し指を合わせながら上目遣い。なにこの可愛い年上。
毎晩抱き枕にしたい。むしろ今すぐ。
「……」
クロエの三点リーダ的視線に気づいて、滾る衝動を抑えた。
今晩はクロエをたっぷり可愛がらないと命が危なそうだ。
「まぁそれはそれとして、今回は悪徳事務所に当たって災難だったな。次にやりたいことが見つかるまでは俺の家でゆっくりしてくれよ、100年くらい」
遠回しに我が家への永久就職を打診。
けれど真緒姉は寂し気な息を吐いた。
「悪徳事務所、だったのかな……」
「は? 決まってんじゃん。なぁ?」
「蓮司様の仰る通り、濃縮還元純度120パーセントのベンタブラック企業でございます」
「ほら、クロエもKカップバストを張りながら断言しているぞ」
「むふん、でございます」
無表情の陶磁器顔で無駄にセクシーポーズ。
けれど、真緒姉の表情は明るくことはなかった。
気遣うような微笑を一瞬。
それから、罪の告白でもするように静かに語り始めた。
「……同じ事務所でも、グラドル路線で長く売れている先輩もいるんだよ……ただ、あたしよりもずっとスレンダーだけど」
「「……」」
その言葉に、俺とクロエは両手を垂らして佇んだ。
「あたしも、そういう側面がある業界だって知ってはいたよ。知り合いや先輩にもそういう子、いっぱいいるし。でもまさか自分がそうなるなんてね……」
たおやかな両手が、そっと豊満な胸に触れる。
「なんで胸が大きいだけで、こんな目に遭うのかな……こんな胸じゃなかったら、もっと違う人生があったのかな……」
自身の深い谷間を見下ろしながら、真緒姉は声をしめらせる。
その否定的な言葉が俺の胸に刺さり、ぐっと奥歯を噛みしめた。
――俺は無力だな。
邪神を倒す聖剣があっても、従姉一人笑顔にできない救世主なんてインチキだ。
俺は30兆円ある。
真緒姉を一生養うことはできるだろう。
でも、それじゃ本当の意味で救ったことにはならない。
姉さんを苦しめているのは、この世界そのものだ。
異世界転移したばかりの頃のような無力感と自己否定感に頭の奥が重く、苦しくなってくる。すると、
「この世はままならぬものですね。邪神を倒せば平和になった異世界の危機が楽に思えますよ」
クロエの一言で、俺は天啓を得た。
「待てクロエ、いいこと言った」
「流石は私。そして何を思いついたのですか?」
俺は手を叩いて左右に展開したストレージから札束の雪崩を起こした。
「どうせ30兆円あっても使い道ないしな! こいつでぱーっと世界を買い取ってやろうじゃねぇか! そんで全爆乳美女を救ってやんよ!」
「へ……」
真緒姉はぽかんと口を開けた。
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