ピクチャーモンスターズ!〜異世界に転生した少年の絵が大暴れ!〜
和屋るふへ
プロローグ
10年前…
「ふんふふんふ〜ん♪」
自分の部屋でスラスラとスケッチブックに向かって絵を描いている少年がいた。スケッチブックには自分の名前が描かれている。「えおカケル」と。因みに机には父親から貰った絵の具セットが転がっており、「絵雄カケタ」と名前が書かれている。
「出来た!」
カケルは絵を描くのが大好き。いつも変なモンスターやロボットを描いている。今日描けたのは今までの絵よりもカッコよく、そして自信作。白銀の鎧を纏い、左手には盾、右手には剣を装備している騎士のロボットだ。
「名前は〜…う〜ん…」
カケルはそのロボットの名前を考える。するとピコーンと言う音が頭に響き、騎士のロボットに名前を付ける。
「今日から君はキシナイト!騎士の中の騎士だから、キシナイトだ!」
その時、絵がほんの少しだけ動いた様な気がした。カケルは目をこするが気のせいかと思い、明日の用意をしてベッドに潜る。
10年後、現在。
「ふんふふんふ〜ん♪」
カケルはもう高校生にまで成長し、いつものように散歩に出かけていた。カケルにとって散歩とは最高のアイディア探しなのだ。街に行き交う車や通りすがる人々、そびえ立つビルやスーパー、公園など、カケルにとって街はアイディアの宝箱の様な存在だ。
「今日はどんな絵を描こうかな〜。」
高校生になっても相変わらず絵を描くのが大好きなカケル。手にスケッチブックを持ちながらキョロキョロと周りを見渡す。するとあるものが目に入る。
「うん…?」
カケルの目は一瞬で焦りに変わる。フラフラとしているトラックが横断歩道に近づいている。信号は赤だ。カケルは飲酒運転だと判断。急いでスマホを出して連絡しようとするがまたもや緊急事態が起きた。
「あれは…!?」
子供がトラックに気づかず横断歩道を渡っていた。人通りが少ない横断歩道であるため周りには誰もいない。
「…!」
カケルは一心不乱に駆け始める。
「うん?」
子供がふと横を向くとトラックが近づいてきていた。子供の楽しげな顔は恐怖に変わり、悲鳴を口から放つ。
「たあっ!!」
しかし次の瞬間、道路から飛び出したカケルが子供を突き飛ばす。助けれた事にカケルはニコッとするが、次の瞬間、身体にトラックの衝撃が走った。ボゴン!と鈍い音が身体中に響き、ガガガガと言う音と共にグシャグシャと身体にタイヤの跡がつく。
「…!お兄ちゃん!?」
子供が慌てて駆け寄る。トラックはそのままフラフラと去っていき、周りの車は急いで止まり、運転手達がゾロゾロとカケルに集まる。
「大変だ!トラックにはねられたぞ!」
「警察に連絡して!」
「救急車!救急車を!」
辺りは騒然となり、大騒ぎとなる。子供はカケルに寄りかかり、何度も揺さぶる。子供の手はいつの間にかカケルの血で塗りつぶされていた。すると、カケルの手が自分の顔を触ってくる。
「き…が…じで…よ…った…」
君が無事で良かった。そうカケルは言おうとするも口がその言う事を聞いてくれない。喋ろうとして口が出してくるのは血だ。
「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
救急車のサイレンや、パトカーのサイレンが聞こえてくる。カケルの意識は朦朧としており、子供の顔も滲んで見えなくなってくる。しかし、カケルは最後まで子供を守れたという喜びと達成感によって笑顔を保てていた。
「…さようなら…」
最後の力を振り絞り、カケルはこの世に別れを告げる。高校生、絵雄カケル。交通事故により、16歳という若さでこの世を去る。近くに落ちていたのは「えおカケル」と名前が記されたスケッチブックだった。
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