第11話 英雄

ワープがうまく行き、ダンジョンの入口へと戻ってこられた。その直後、大歓声が俺たちを包んだ。


 「ファントム!ファントム!ファントム!」


 「うぉぉぉぉぉ!よくやってくれた!」


 「お帰りディープファントム!」


 「さすが期待の新人パーティーだな!」


 すごい盛り上がりだな。今は正直そんな気分じゃないんだがな。


 「すごいね、ここまで騒がれるとちょっとびっくりしちゃうけどね」


 「そう、だな」


 ダンジョンで5人死んだ。その情報は知っていても、どのようにして死んだか、死んだ人の仲間がどんな気持ちか等はこの人たちに想像することができないだろう。


 俺たちはダンジョン攻略に成功した。その事実は変わらない。それと同様に、この成功の裏には5人の犠牲者がいたことを忘れてはならない。そして俺は、この事実を背負っていかなくてはいけないのだ。


 「……ねぇ、ゆーくん」


 「どうした?」


 「君は今、目の前で仲間を失った人を目にして素直に攻略を喜べないでいる。そうだろう?」


 「あぁ。バレたか」


 「何年一緒だと思ってるんだ、それくらいわかる。でもさ、ゆーくん。少なくとも、群衆の前では明るく行こう。君は今、ダンジョンから生存者2人を救い出し、核を破壊した英雄なのだから」


 「英雄ね……」


 「そう、英雄。誰もが夢見る奇跡のヒーロー。ダンジョンで人を救うたび、攻略を成功させるたびにこうやって呼ばれていく。嫌だとは思うけど、受け入れてみようよ、ゆーくん」


 別に知名度が欲しくてダンジョンを攻略してるわけじゃない。誰かの心の支えになるためにいるわけじゃない。ただ、楽しくてダンジョンにいる。それだけで、英雄と呼ばれていいのか。


 ……考えたってしょうがないな。俺は今、周りから見れば遭難者を救った英雄ヒーローなのだから。自分のためにしたことで人を救えるなら、英雄でもなんでもなってやる。


 俺は静かに右手を上げ、双剣の片方を掲げた。直後、大歓声が鳴り響きその場は熱気に包まれた。この歓声を忘れずに生きよう。これが、俺のダンジョン攻略人生の楽しみの一つとなるように。

 

 「ふふっ、ゆーくんらしくないね」


 「なに笑ってんだ、ほら行くぞお前ら。俺はもう疲れたんだ、早く石神井ダンジョンいって癒されたい」


 「はいはい、わかったよリーダー。我が社のホテルにご案内いたします」


 「っしゃぁ久々の休暇だ!明日明後日は学校休みだろ?遊びまくれんじゃねえか!」

 

 「ボス部屋まで走るときにその体力を保たせてほしいものだぞ、キバ」


 「それとこれとは話がちげぇじゃんよたかちゃん」


 「ほら、ぐちぐち言ってないですぐ行くぞ。あんま長居すると身バレすんぞ」


 そういって俺らはすぐに吉田さんのとこへ行き、核の破壊と救助者の名前を伝えその場を後にした。

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