第19話
「今度は、私達が守ってあげる」
目の前の少女が、柔らかく微笑みながらそう言った。
守ってあげる。そんな言葉を年下の女の子達に言われる日が来るなんて、思いもしなかった。
少なくとも、守られるべき子どもなのは、自分なんかではなく、彼女達だろう。
それでも、その言葉は、とても力強くて、あたたかく感じた。
「……でも、あんまり出しゃばり過ぎないでよね」
椎奈が、わずかに真面目な顔つきに戻る。
「私たちはただの低ランク魔法少女。もしも特排対象にでもなっちゃったら、隠し通す方法も、守れるだけの権限もないわ」
「??? ……とくはい?」
横から、光莉がきょとんとした顔で首をかしげる。
「魔法災害特殊排除対象の略称です……。
特災官による執行の可能性も、出てきてしまうので……。もしも対象になってしまったら私たちでは、どうにもなりません……」
穂乃花が、困ったように眉をひそめながら説明した。
…なるほど、そういうのもあるのか
やはり、魔法少女とはいえ人それぞれで。
魔法を間違った使い方をしてしまう子も、いるのだろう。
「くさりちゃんが攻撃されちゃうってこと!? やばいじゃん!」
「あなた……。座学で必須で習うことじゃない……? それに、またその呼び方……」
椎奈がこめかみを押さえる。
「……もしかして、わたしのこと…?」
思わず口を挟むと、光莉がパッとこちらを向いた。
「そう! くさりちゃん! みんなには不評なんだけど、どう?」
「……くさり」
自分の口から出たその言葉が、今の自分を指す言葉だと思うと、少しくすぐったい。
「うん、それでいい」
本当に、それでいいのかどうか、自分でもよくわからない。
それでも、なんだか胸の奥のほうが、ほんの少しだけあたたかくなる。
……もしかしたら、嬉しい、のかもしれない。
「えぇ……。まあ、本人が嫌でなければ、いいんですけど……」
穂乃花が、複雑そうな顔で笑う。
椎奈は「理解できない」と言いたげに、わずかに眉をひそめた。
――そのとき。
遠くから、低いサイレンの音がかすかに響いてきた。
ほぼ同時に、三人のポケットの中で端末が震える。
「こ、これは……魔災獣出現予測、ですね…」
穂乃花が端末を取り出し、画面を確認する。
椎奈が、不機嫌そうに眉を寄せた。
「少し前に志乃原さんも言っていたけれど、最近の魔災獣出現予測、急すぎない? 頻度も多すぎる。」
ぶつぶつ文句を言いながらも、指は手際よくマップを操作している。
「……い、位置は、この公園からなら変身して五分圏内ですね…」
椎奈が顔を上げる。
「ぐずぐず言ってる時間は無さそうね。とりあえず、行くわよ」
「こ、ここでするんですか……? たしかに人はいないですけど……」
確かに、昼過ぎの公園は、今日も相変わらず閑散としている。
ベンチと、ジャングルジムと、スプリング遊具と、雑木林。
人影は、どこにもない。
自分以外は。
「この子――くさりなら、もう大丈夫でしょ」
椎奈が、ちらりと私を見る。
「そうそう! もうくさりちゃんは仲間だもんね!」
光莉が、にかっと笑った。
……きっとこの子は数回話したら友達だと思い込むタイプだろう。
友達ってどこからが友達だろう…?みたいな疑問とは縁がなさそうだ。
そんなことを考えていると、三人はそれぞれポケットからお揃いの、キーホルダーのようなものを取り出した。
そして、先端についている宝石のような部分に、そっと指先を触れる。
……そうか。
どこか、自分が魔法少女らしくないとは思っていた。
変身後の見た目とか、内面とか、そういうもののせいだとばかり思っていた。いや、きっとそれもあるんだろうけれど――
――もっと大切な物が足りなかったんだ。
眩い光と共に、神秘的な魔力紋が彼女達の足元に浮かび上がる。
オレンジ色の魔法紋が光莉を包み、
淡い水色の紋が穂乃花の足元に広がり、
群青の紋が椎奈を中心に回転する。
「……2人とも、行くわよ」
真っ直ぐな眼差しで見据える彼女達。
大切な人たちを、街を、守りたいという明確な決意。
自分が心のどこかでずっと憧れていたもの。
……ずっと届かなかったもの。
「「「
これこそが、きっと、ヒーローである証だ。
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