天使カナエル
月に一度レティエルは天界に戻り定期報告をする。その後いつもカナエル、天友に会いに行くのだ。カナエルのところへ向う。「レティー!疲れたでしょ!いま紅茶を準備するね」そういい座るのを促す。レティエルは座らない。茶葉を濾してからお湯をポットに注いでいるカナの背後に立つ。唐突に告げた、
「悪魔との間に子供ができた。」
ティーカップに注ぐ手が止まる。
「は?なんて?」
お腹を抑え、淡々と言う。
「お腹に子供がいる」
カナは息を吸い、怒鳴った。
「はぁ!?あんたわかってんの、規定違反だぞ!!それに悪魔と交配したなんてしんだっておかしくない!!」
「わかってる、」
「わかってないよ!!」
どんどん声が大きくなり、レティーの口ぶりにイライラして叫び声になっていった。
「でも、わたしこの仔を産みたいの。」
開きかけていた口元が固まる。レティエル覚悟した顔をしていた。真っすぐに。見つめる。既に母親の顔だった。シをも恐れない顔。
それに反比例してカナは段々悲痛な表情になっていく。片手で額を抑える。
「どうして、」
「ごめん」
レティーはそう言って立ち去った。
ティーカップの中の紅茶は冷めてしまったが、捨てられそうにない。
やはりレティエルは出産予後が悪く、シンダ。
シに際に私にこう言ったのだ。
「この仔をお願い」
バカな天使だ。酷い女だ。
私にとってレティーは憧れの存在であり、愛しい存在であった。
もっと早く伝えてればこうはならなかったかもしれない。いや、もっと何かできたかもしれない。ずっと生きてると思ってた。一緒に生きてくと思ってた。そうか天使もシぬのか。
悪魔と交配するなど禁忌だ。すぐに報告して処分をーーーーーー。
ゆりかごの中で羽を休める哀れな天使が瞳を開ける。にこにこと私を見て笑った。今からコロされる相手を見て笑った。
水滴が頬に落ちて流れる。しゃがんで膝を丸めた。勘弁してくれ、と。
結局、私は愛する人が残していった、宝物を手放せなかった。
だから、秘密裏に育てることにした。そして、それにリアエルと名付けた。リアエルは厳しく育てることにした。周りに負けぬように、私が消えても大丈夫なように。幸いレティエルと同じように天使の秘術に長けていたため苦労はしなかった。
お母様、とリアエルが駆け寄る。成長する度にレティエルの生き写しのようで棘が刺さった気持ちになる。天使特有の水色の瞳。リアエルは赤とのオッドアイだった。前よりは天界で偏見はなくなったが、念の為、私はリアエルに左目を隠すよう、誰にも見せぬよういった。
リアエルはこれらの真実を知らない。純粋な天使だと思っている。能力値も運が良く高いため周りもだれも疑わなかった。そう、それを知ってるのは私だけ。……悪魔の父親は知ってるのだろうか。いや、そんなことどうでもいい。一刻も早く実父をコロし、この完全犯罪を成立させる。この子が大人になるまでにこの私が終わらせる。
その夜、カナエルの羽だけが家に帰ってきた。
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