純愛は諦めて逆ハーレム&スローライフ配信します

あっぴー

第一章 田舎で他人と同居生活?!

第1話 浮気したよね? 私もするね?

俺、不老莱斗ふろうらいとがいつものように仕事から帰ると、賃貸マンションで同棲している彼女の矩梨杏かねりあんは電気もつけず、俯いてリビングの椅子に腰掛けていた。

「おいおい、どうしたんだよ、仕事で疲れ果てたのか〜?」

俺の手で部屋が明るくなるや否や、いつもは明るく出迎えてくれる彼女が、こんなにらしくもない行動に出た理由までもが明るみになった。

「……あっ」


それは、俺が煌びやかなお城風のホテルに

……梨杏ではない若い女の子と出入りしている写真だった。


「い、いやこれは、」

「どういうことでもいいんだけどさ。

 こうなったからには、選んでよね。

 今すぐきっぱり別れるか、」

いや、それは困る。

せっかく捕まえた、4歳も歳下の、可愛げに溢れて甲斐甲斐しい彼女なのだ。

31歳の、給与も同年代では平均的な、これおいって取り柄もない俺としては、梨杏と別れてしまっては、それ以上の相手が見つかる気がしなかった。

この浮気相手には本気では相手されるわけがないし、されたって金遣いが荒くてわがままなんだから、困る。

同じ会社で鬱憤を溜めて、その憂さを晴らすのにお互いちょうどいい相手だった、というだけだ。

も、もうひとつの方とやらを選ぶしかない……

家事を全部やるとかだとキツいが、金でなんとかなることならば……

即結婚……でもまあいいだろう……



「……私が他の男と遊んでも許すか」



「ふぇっ?!」

思わずおかしな声が出てしまった。

「お、お前そんなことしたいの?!」

「したいよ?

 なんでそっちが楽しく外で若い人と遊んでるのに、私がそれを望んじゃいけないの?」

「そ、そうだけど、い、嫌だよそんなの……」

「じゃあ別れよっか」

「やめてくれっ!

 ごめんなさい、この通りだ!

 なんでも買ってやる! 今すぐ結婚だってする! 家事育児もできる限りする! これ関連の暴言には一生、文句言わず耐えるっ!

 だから、だからっ……」

「いらないわ。

 それ全部いらない。

 謝っても無駄だから、謝罪すらいらない。

 何度も暴言吐く権利もらったって、そんなのこっちが疲れて嫌な気分になるだけだし、

 浮気で価値の下がったあんた相手に、一途にしといてあげる気は起こらないな」

ナメていた……

バレてもこう言えば許してもらえると、どこかで完っ全に梨杏のことをナメていた。

こうもあっさりと切り捨てられるとは……

慌てた俺から次に出てきたのは、なんとも情けない言葉だった。

「でも、梨杏だって、俺と別れて俺以上の男見つかると思うの?」

「思わないよ。

 だから、一対一で付き合うのは、もういいかなって。

 今から新しく、結婚前提の真面目な関係を一から作り上げるのとか、もう、考えただけで疲れるし」

「えっ?」


「私さ、浮気されるたんびに同じ二択を迫って、毎回そうやって嫌がられて、結局別れてんだよね。

 だから、一途を誓ったところで、よくてこの程度の男しか捕まらない

 ……この先、歳とってモテなくなってく一方で、碌な男と結婚できそうにないなら、

 最初から特定の相手決めないで大勢と遊んだ方が得だし、浮気されたら悲しい悔しいとか気に揉む事もないから、気疲れもなくて楽しいなって」


「えっ……

 お前、そんなに男が好きなの……」

すると梨杏は、キャラメル色のロングヘアに軽くパーマをかけた頭を、うん、と縦に振った。

その愛くるしい動きと表情には一切迷いが感じられず、また怖じ気付いてしまった。


「だってさ、男って生き物は素晴らしいじゃない?

 良識とか無視したら、同じ時期に一人としか深く付き合えないなんてもったいない、と思うぐらいにね。

 平均的に女より稼ぐし、背が高くて便利だし、鍛えたら鍛えただけ見た目にも体力にも結果が出やすいし、美容に気を遣ってる人は見た目の老化も緩いし、何より優しいし?」

そうかなあ……?

少なくとも俺に対しては女の人の方が優しいけどな?

歳上や目上でも威圧感とかパワハラとかない人が多いし。


ああ……

梨杏に尽くされて、熱い目で見てもらえてたからって、俺自身が凄い人間なんだって、大いに自惚れてた。

本当は、俺が男だから、って部分が大きかったのに。

欲をかかずに、梨杏ひとりだけを見て結婚していれば、こんな本音を知ることはなかったかもしれないのに。

そんな、あったかもしれない幸せや未来を、俺は自らの手で、どう足掻いても最早実現不可能なまでに、ぶち壊したのだ。

梨杏が結婚を望んでいるのは知っていたのに、グズグズとはぐらかして、関係を腐らせたのだ。

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