第2話
「変える」
風呂上がりの洗い髪を雑に乾かして、タオルを肩にかけたまま洗面所から出て来た舞香が呟くように云った。
「今度は何?」
キッチンで皿洗いをしていた僕は、ややウンザリしながらそう応えた。
「髪型変える」
「えっ、どんな風に?」
「うーん、ショートかなぁ」
「ええ〜っ、長い方が僕は好きだけど」
「ヒロくんの好き嫌いに合わせないといけないの?」
「で、でも、僕がモヒカンにするって云ったらどう思う?」
合わせてくれたっていいじゃんと云う言葉をごくんと飲み込んで、一応反論してみた。
「ヒロくんは、モヒカンなんかにしない」
正論だ。何も言えない。
「そりゃそうだけど」
「じゃあ、いいじゃん」
「どんな心境の変化?いきなりカーテンも替えたし」
やっぱり話を変えるしかなかった。
「失恋かなぁ」
「ええ〜、誰に?」
「冗談だよー、何で本気にするかなぁ」
そう云って、舞香はベッドに潜り込んで背中を向けた。
「待ってよ、長い方が似合うと思うよ」
皿を洗い終え、タオルで手を拭きながら僕は食い下がってみた。
「ショートの私、見たことないくせに」
また正論だ。
「そりゃそうだけど」
「じゃあ、いいじゃん」
いつも、この手の言い争いには勝った試しがないのだ。
結局、舞香は翌日ショートカットにして帰って来た。悪くない。舞香は元が美人だから何でも似合うんだけど、何だかなぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます