龍の助っ人

鈴木まる

第1話 プロローグ

 暇だ。


先程から皐月さつきの脳内にはその言葉が幾度となく浮かんでいた。


高2の夏休み、のどかな昼下がり。冷房の効いた、快適だが雑然と物が散らばる室内。寝ころんだ窓際のベッドから見える空は、真っ青に輝いている。


スマホを確認するも白くはっきりと時刻を表示するのみで、誰からも遊びの誘いはない。


再び嫌になるほど青く明るい空を見て、異変に気付いた。


雲が出ていた。


細長く、飛行機雲のような雲。しかし、それはうねうねと蛇行している。


龍神雲、とか言うんだっけ…?


とスマホで調べた後もう一度空に目をやる。その雲をよく見ると、妙にはっきりしていること、そして家のすぐ裏の山に伸びていることに気付いた。


どうせ暇なのだ。暑いといえど熱中症警戒アラートは出ていないようだし、裏山に久々に登ってみようと皐月は部屋着から出しっぱなしにしていたデニムのショートパンツとポロシャツに着替えた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る