一夜漬け建国史
敷島
ep1.Prologue
二重にかけた布団が、この頃になって漸く効果を発揮してきた。窓から見える街は、皆が寝静まっているというのに、依然として眩い光を放っている。全てが退屈である。うつ病ではない。唯の厨二病かそこらの類であろう。だが、この歳になって発病しては、もはや不治の病である。
大学を卒業して、いわゆる大手に勤めてもう10年になる。上には文句も言わず、残業もして、優秀な社員として、ただ親への恩義を思って働いた。少なくとも、自分はそのつもりである。だが、その親も既に死んだ。その時にはもう若くない。30を過ぎたというのに、自己さえも確立できない。かのエリクソンが今の私を見たら何と言うのだろうか。
暖房が切れた。言わずもがな、死にたいというわけではない。だが、何かやりたいことがあるのかと言われると何も浮かばない。この退屈を打破する何かを、今の状態では成し得そうにないのである。ゲームも読書もスポーツも、一時的な解決策でしかない。人生単位でのゲームというのなら、それもまた面白いのかもしれないが、そんなものは夢物語であろう。
…人生単位の、ゲームか。
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