アルシュ・ラータの独白

***


 私、アルシュ・ラータは、キャットウォールの西部、乾燥した草原地帯に佇む貧しい村で生を受けた。


 ​キャットウォール──その名は、幾重にも連なる山々の壁に囲まれていることに由来すると、私はようやくその知識を得たばかりだった。

 私の故郷は極めて困窮しており、村人たちは家畜の飼育で日々のわずかな糧を得ていた。私もまた、幼い頃から両親の仕事を手伝い、その過酷さに嫌気がさすことも一度や二度ではなかった。


 私は小さな頃から人見知りで、村に友達なんて、一人もいなかった。

 でも、私にはカイがいた。

 ​白い毛並みの雄猫、カイ。

 私がまだ物心つかない頃、村に捨てられているのを見つけ、それ以来ずっと苦楽を共にしてきた、かけがえのない親友である。


 カイは、猫にしては全然動かなくて、いつも気だるげにしていた。それがまた、かわいくて――。


 ​だからこそ、彼の突然の失踪は、私にとって深い悲しみとなった。私は何度も、声が枯れるほど泣き続けた。

 両親に捜索を懇願したが、折り悪く家畜の世話が多忙を極める時期で、彼らは私の訴えを聞き入れようとしなかった。


 ​親友を喪った心には、ぽっかりと大きな穴が空いたようだった。私は両親の手伝いの合間を縫って、一人で必死に探し回ったが、手がかり一つ見つからない。

​ 

 もう、カイには二度と会えない。そう、どうにか自分を納得させようと、諦めかけた、その時――

 【探偵】は、現れた。


 ​その飄々とした態度は、当時の私から見ればどこか胡散臭く映った。

 しかし、頼れる者が他にいない状況で、私は藁にもすがる思いで【探偵】と、彼に付き従う若い女性の助手に、カイの捜索を依頼した。

 依頼を受けるや否や、【探偵】は私に矢継ぎ早に質問を投げかけた。

 カイの細かな特徴、特有の癖、失踪当日の天候は雨か、晴れか。さらには、私の好きなものは何か、といった、明らかに捜査と無関係に思える事柄まで、多岐にわたった。


 そして、私が話している間も、【探偵】の視線は、まるで遥か遠くの何かを見通しているかのように感じられた。


 ​彼の聞き取りは、私が意識していなかった細部までをも思い出させてくれるものであった。これまで誰からも真剣に話を聞いてもらえなかった私にとって、それはたまらなく嬉しい時間だった。

 私が語り終えると、【探偵】はすぐに助手と共に村を後にした。助手は不満げに文句を垂れていたが、それも無理はない。村に到着してから数時間で、再び旅立つことになったのだから。

 私は、彼がなぜこの村で捜索を始めないのか、不思議でならなかった。だが、そう尋ねた私に、彼はこう返した。

「だって、君は、カイくんを、探したのだろう?」

 それは、あまりにも当然のことのように、幼い私を信じ抜く言葉だった。

 その信頼の眼差しが、どうしようもなく嬉しくて。私はこの【探偵】を信じようと、その時、心に強く誓った。

 それから数日後のことだった。【探偵】は助手と共に、再び村へ姿を現した。

 カイを、その胸に抱いて。


 ​カイは「にゃーん」と愛らしい鳴き声を上げ、【探偵】の胸から抜け出して私の元へ駆け寄った。私の足元に、頬を擦り寄せてくる。


 ​自然と涙が溢れた。彼と、再び共にいられる。ただそれだけのことが、胸の奥底から込み上げる涙となって溢れ出た。

「ありがとう、探偵さん」


​「依頼だからね。できることなら、何でもするよ」

 そう、穏やかに微笑んだ【探偵】は、再び村を去っていった。

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