第2話 攻略キャラ

方向音痴にしても受かった高校の場所が分からないとはやばいな。イケメンなだけにもったいない。


「教えてくれてありがとな!君の名前を教えてくれよ!後で礼をしたいんだ!」


ぐいぐい来るな。里奈は困っている感じだな。しゃーない。


「俺の名前は鳴海 翔よろしくな!」


イケメンだしきっといい奴に違いない。俺は軽く考えて割って入って自己紹介する。


「お前はいい。それより君の名前は?」


「は?」


こいつ俺のことをゴミやらを見る目で見てきて無視しやがった!俺は凄みを増さして無理矢理言う。


「おい!俺は鳴海 翔だ!よ・ろ・し・く!」


「お、おう…」


「ほら、行くぞ!」


「う、うん!」


俺は無理やり里奈の手をつなぎ去っていった。


そうして本城 太一との初めての邂逅は終わった。


ちなみにこのゲームは攻略キャラは5人である。さっきのメイン攻略キャラ本城 太一。勝気な性格で俺様系の松田まつだ 勝木かつき。ヤンデレキャラの臼井うすい 大地だいちこの三人が序盤のキャラである。あとの二人は隠しキャラである。


「翔痛いよ」


「す、すまん。お前が困ってたからつい」


「う、うん。ありがとう!」


「おう、気にすんな親友だろ!」


俺の大事な親友だからな。あんな奴には近づけさせられない。


「うん」


少し暗かったような気がするが元気だから大丈夫か。


こうして俺達は掲示されていた教室に行く。


「一緒のクラスでよかったね!」


「そうだな。これで宿題も困らないな!ははは」


「それは自分でやりなさい!」


この時この二人は周りの人間からは完全にカップルに思われていた。


「もうカップルがいるな」


「きっと中学からのよ」


ひそひそと噂されているが皆、暖かく見守っているから二人は全く気付かない。


だがその雰囲気を気に入らないやつが一人いた。そう、松田 勝木だ。


「おい、お前ら朝からうっとおしいんだよ!」


「ご、ごめんなさい」


里奈がすかさず謝る。謝らなくていいのに。


「お、お前よく見ると可愛いな!そんな奴ほっておいて俺様と遊ぼうぜ!」


遊ぼうってこれから入学式だが?こいつは大丈夫だろうか?


そんなことを呑気のんきに考えているとこちらに近づき言ってくる。


「いいよな」


こちらを見てにやけてくる。こいつは悪役キャラかよ!?


「いや、だめだけど?」


「は?」


「いや、だからだめけど?」


「お、おお。お前意外と男らしいんだな」


「どうも?」


「今日は諦めてやる。また誘うからその時はよろしくな別嬪さん」


里奈は何も言えなくなっていた。怖かったんだろうか?


「大丈夫か?」


「う、うん。ありがとう翔!」


なぜか顔が赤くなっているがまさかああいうのかタイプなのだろうか?


「タイプだったのか?」


「は?ありえないけど」


「ひっ!?す、すまん」


めっちゃ怖くなった親友におびえる俺であった。


「あ、体育館に行くみたい!行こ翔!」


「ああ」


すぐに戻った里奈に言われて俺達は体育館に向かう。


「うう」


その途中、体調が悪そうな男を見つける。


「おいお前大丈夫か?」


「う、う」


「里奈、俺はこいつを保健室に連れていくからお前は先生に事情を話しておいてくれ」


「うん。分かった!」


そうして俺は男子生徒を担いで保健室に連れていく。


このときまた鳴海 翔によって一つのフラグが潰されていた。この男子生徒。臼井 大地を本来は里奈が助けてフラグが立つはずだったのだが、翔が助けてことによってフラグが奪われたのである。


もうお分かりだろうが、勝木の件も見事にフラグを奪っていた。本来なら里奈が「あなたなんかとは仲良くできない!」と言い、勝木もその態度を気に入り関係を持つことになるのだが、翔によって防がれてしまった。


そんなことがあった裏で本城 太一は悩んでいた。


「くそ、なんだあのモブは!」


そう、この男本城 太一もであった。そしてこの翔と違いこの世界が乙女ゲーの世界と認識していたのである。


「好きな乙女ゲーの世界に転生できたと思ったのに、なんでか主人公ちゃんと俺は幼馴染じゃないし代わりに変な奴が近くにいるし、意味が分からない!」


それもしかたない。なにせ太一が転生したのはつい最近の話。先に転生していた翔がまさかフラグを奪っているなんて思わないし、まさかゲームで存在しない親友ポジになっているとは思わないだろう。


そうして翔の知らぬところで世界は回るのである。


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