静かで不思議な魅力に満ちた作品。物語の背景やキャラクターの心情が、一切の説明しないで、二人の交わす言葉だけで明かされていく構成に強く引き込まれました。
特に秀逸なのは、彼のアイデンティティの根拠に、『ウルトラセブン』の「ノンマルトの使者」という創作物を例に使っている点です。この例えが、彼の「元々地球にいたが、後から来た者に追いやられた」という主張を強くします。
彼の言葉は、単なる妄想で片付けられない哲学的な深みを帯びており、自己とは何か、世界に対する認識はどのように作られるのかという、本質的な問いを読者に投げかけてきます。
全体を通して静かなトーンで進みながらも、その対話は深く、静かな余韻を残す傑作です。