ゼオ星系警備軍
全長100m程の小型宇宙船オーガは、中継ステーションを出発して、一光年離れたスターゲートに向かおうとしていた。
スターゲートから中継ステーションまで、1AUつまり1億5千万Kmほど離れている。
0.2Cで小一時間ほどの距離であり、大石たちは問題ないと思っていたが、突然、ゼオ星系警備軍から、停止命令を受けた。
「こちらゼオ星系警備軍ゲート警備隊だ。宇宙船オーガ、航行停しろ」
大石は、交信に応じず、笑いながらクオリスに話しかけた。
「『停止しろ』と言われて、停止するくらいなら、この仕事を行ってないよね」
クオリスも応じる。
「相手確認せずに、停止命令ですから、空港にいる時から見張られていたようですね。キャプテンどうします?」
「相手は?」
「巡洋艦クラス、5隻」
「速度の出る駆逐艦ではなく破壊力のある巡洋艦を、それも5隻か」
「クラスは船の大きさからの判断です。戦闘能力は分かりません」
「と言うことは、あの船の能力を調べると、マックから金をもらえるかな」
「それは、キャプテンの交渉能力しだいですね。
ところで、まだ何か言ってきていますよ」
「仕方ないな。0.4Cまで加速して、オールトの雲の中へ。お二人、急加速しますよ」
大石が、乗客二人に言い終わると当時に、オーガは急加速した。
しかし、オーガは重力フィールドで守られているため、中にいる乗客には加速度はほとんど感じられなかった。
オールトの雲と呼ばれていても、構成する小天体間は、数十万~数百万Kmと離れている。
各小天体間は離れていても、その間を飛ぶ宇宙船が光速の40%では、激突しかねない危険な航行である。
その宇宙船オーガの後ろを、5隻の大型宇宙船が追っている。
その5隻は、小型宇宙船の様な小回りの利く機動が行えない為、衝突しそうな前方の小天体があると、マイクロウエーブビームやレーザーで破壊しながら進んでいる。
破壊された小天体の主成分は氷である為、そのガスつまり水蒸気が拡散される。
内部にあった岩石も飛び出す。
それらが、オーガに衝撃を与え始めている。
「直接、当たらないだけマシか」
大石は、状況に似合わない気楽な言葉を発した。
クオリスも、それに合わせて応じる。
「小天体を避けるのに、こんなアクロバット飛行をしていたら、狙っても当たらないでしょうね。と言うより、モロに狙っていますよ」
「やっぱり。そうだろうな」
追われているオーガのコクピットに大石、後ろに密航の2名が乗っている。
コクピットに座る大石が、尋ねていた。
「な~ 正直に話してよ。嘘だと、やる気がでないよ」
後ろに座る中年の男性が答える。
「何度も言っている様に、心あたりがありません」
「俺も、最初は、惑星ゼオへ運んだ荷物の輸送料の件と思ったよ。噂にたがわず、支払いを拒否した。その結果、確かに空港の一部が壊れた」
それに、クオリスが割り込んだ。
「言葉を正確に。『壊れた』ではありません。『壊した』です。そして、一部ではありません。全壊です。なお、あれは空港ではありません。ただの空き地と小屋です」
大石が続ける。
「確かに、空港というレベルではなかったが、ともかく、それで軍を動かすか?
しかも、こちらを捕まえるのではなく、破壊しようとしている」
「キャッ」
突然、大きな衝撃が宇宙船を襲い、重力フィールドの疑似重力では吸収きれず、大きく揺れて、隣に座る少女が叫んだ。
クリオスが説明する。
「小さな岩がぶつかりました。シールドで防いでいますので、船体外殻に影響はありません」
大石が補足する。
「今のところは、だな」
クリオスが続ける。
「2隻が進行方向へ先回りして、小天体を集め始めています。このままでは厳しいと思われます」
大石も続ける。
「このままでは、逃げ場がなくなるよな。仕方ない」
大石は通信をONにした。
「ゼオ警備軍。こちら宇宙船オーガの大石だ。応答してくれ」
「オーガ。こちらゼオ星系警備軍スターゲート警備隊のマッテオだ。停止するか?」
「マッテオか いい名だな。しかし、停止はしない。遊びは終わりということを伝えたかっただけだ」
「ならば、まともに攻撃するぞ」
「宇宙船が破壊されたら、乗客の二人も死ぬぞ」
「密航されるよりましだ」
「誰が乗っているのか分かって言ってるのか?」
「聞きたくない。聞けば、命令を実行し辛くなる」
「では、逃げる。お前さんの名前はマッテオでも、俺たちは神の賜物を待たない」
大石は、相手の返事を待たずに通話を切った。
クリオスが突っ込む。
「最後の言葉は、イタリア語『マッテオ』の日本語訳『神の賜物』 そして、『マッテオ」』と『待つ』を掛けた訳でしょ。イタリア語と日本語に詳しくないと理解でいないです」
「からかえたから、かまわないよ。それに、二人が彼らの目的である事も確認できたし」
「いつもの癖と言うか、遊びが出たということでしょうか?」
「そう思っておいてくれ」
「ところで、話が変わりますが、高速ミサイルが二発 発射されましたが、どうします?」
「タイプは分かるか?」
「小天体を避けながら、近づいて来ているので、自動追尾みたいですね」
「余裕はどのくらい?」
「二分前後」
「旋回性能は、分かるか?」
「データが少な過ぎます」
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