スターゲート
スターゲートは、約30年前、異星人類サーダス人と戦いの後、残していった異星人遺跡である。
当時、ハイパードライブで太陽系周囲100光年近くまで進出していた地球人類は、サーダス人と戦いで壊滅的に敗退し、サーダス人は太陽系にまで攻め込んだ。
その後、軍神と呼ばれることになる小岩大佐を中心とした地球軍の捨て身の攻撃で、木星近傍でサーダスの先方部隊は壊滅、サーダス人は進軍を止め、その後、急に撤退を開始する。
この戦いの後、オールトの雲の近くで、11のスターゲートが発見された。
異星人類サーダスが設置し、そのまま放置されものと思われた。
地球人類は、残されたスターゲートを、恐る恐る調査した。
幾つもの勇気ある調査隊がスターゲートを通過した。
その結果、スターゲートの接続先にも、多くは星系があり、その相手スターゲートもオールトの雲の近くにある事が分かった。
そして、スターゲート先の星系の多くにも、スターゲートがあった。
見つかったスターゲートは、合計で100組近く、見つかっていないスターゲートもあると考えられていたが、サーダス人はどこにもいなかった。
異星人類サーダスはどこに撤退したのか?何故、撤退したのか?再びせめてくるのか?
謎が残ったままであったが、地球人類は、このスターゲートを利用して、再び宇宙に進出していった。
スターゲートは、凡そ直径100mのリングの中に存在する。
光などの電磁波はそのまま相手空間に相互通過する為、ゲートそのものは通常認識できない。
しかし、低速でゲートを通過すると、現地に残る部分とゲート経由で相手先に送られる部分に分断される。
ハイパードライブの超光速でゲートに侵入すると、相手先星系に行けない。別次元か、別の時代か不明だが、現在の次元には存在しなくなることだけは判った。
加速運動を行いながらの通過だと、現地と相手先の速度差で、通過物体は、分断されるか圧縮される。どちらにしても破壊される。
定速で通過するしかないが、1マイクロ秒以内に通過しないと、通過中の物体は分断される。
この為、船体長100mの小型宇宙船であるオーガでは、最低、光速の10%つまり、0.1C以上の定速で通過する必要があった。
無論、輸送船等の大型宇宙船はそれなりの高速で通過する必要があった。
そしてそれは、大型になればなるほど、速度調整の設備が必要、別の表現をするなら多額の費用を必要とすることを意味していた。
この1マイクロ秒以上の場合の物質分断を利用して、利用するゲートの近傍では、通常、水または二酸化炭素のガスが撒かれる。
このガス分子は、比較的遅い速度で拡散されるため、一部の分子はゲートを通過する時、1マイクロ秒以上かかる事があり、分子を構成する原子が分断されエネルギーが放出される。
これにより、スターゲートは電磁気的に、かすかに認識できるようになった。
定期的にゲートへガス放出する為、スターゲートの近くに監視を兼ねたに荷物の受け渡しの中継ステーションが置かれた。
* * * * *
大石たちが向かっている中継ステーションは、ゼオ星系に一つしかない。
これは、ゼオ星系にあるスターゲートは、オービオン星系と繋がるものが一つだけしかないためである。
オービオン星系には、ゼオ星系以外に、ロス星系、そして地球へと繋がるティーガーデン星系の3つのゲートがある。
ゼオ星系の唯一の中継ステーションまでの道中、大石は、クリオスと時間つぶしの禅問答をしながらも、常に文句を言っていた。
「人を運ぶのは嫌だ。荷物ならほっといても何も言わないのに、人だと世話を焼かねばならないし、文句も言われる」
クリオスの回答。
「会話しなければよいだけでしょ」
別の文句もあった。
「なぜ、古典のスパイ映画の様なまねをしなければならいんだ」
「元々、古典のスパイ映画が面白いと勧めたのは、キャプテンでしょ」
別のクレーム。
「密航は判るよ。オーガは客船じゃないから。
しかし、なぜ中華レストランで待ち合わせだ。
しかも相手がいつ来るか分からないのに、毎回、豚骨ラーメンと焼き餃子の注文だと。俺を太らせてチャーシューにする気か」
同じく、クリオスの回答。
「中華でありながら、日本独自のラーメンと餃子、合言葉としては最適ですね。それに、キャプテンを太らせても、脂肪が多すぎてチャーシューにはなりません」
「マックの野郎は、合言葉で遊んでいたのだろう?」
「キャプテンは、ラーメンも餃子も好きでないですか?」
「ラーメンも餃子も好きだよ。
しかし、ラーメンと言えば、味噌ラーメンと半チャーハン。餃子なら餃子定食、決まっているだろう。
それを、毎回、ラーメンと餃子。それも、豚骨ラーメンと焼き餃子。組み合わせのセンスがない。それを毎回だと。
俺をラーメン嫌い、餃子嫌いにさせようとしている」
「食べ物センスは、理解できません。しかし、栄養学的には、サラダを追加すれば、ほぼ完ぺきかと」
大石の文句は、宇宙船オーガの食事コーナーとなっているコクピット横のテーブルで、ラーメンを食べながら続いていた。
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