第4話 論外の怒り
俺は彼女を俺の部屋に招いた。
正直、こうしていきなり部屋に招くのは如何なものかと思ったが。
彼女はすんなり受け入れてからニコニコしていた。
可愛らしい顔だった。
「色々なフィギュアが置いてある」
「ああ。自慢のコレクションだ」
「私、これ、知ってる」
「カタドラか。結構前のフィギュアだよな」
好きなものが違うすれ違う中で...だんだんと惹かれ合う話。
俺の好物のラブコメ系だ。
そんな事を考えながら伊藤さんを見る。
彼女は目を輝かせながらアニメキャラを見ていた。
正直。
全然、関奈とは正反対だ。
伊藤さんを見ると幸せな気分になる。
「伊藤さんは特に好きなアニメキャラは...」
「私、は。...三葉。だね」
「ああ。やっぱり?...俺も好きなんだよな。二等分の花嫁」
「一緒。嬉しいね」
「だな」
すると彼女は柔和な笑みを浮かべてから俺を見てきた。
俺はその顔を見ながら「?」を浮かべる。
伊藤さんは「嬉しい。全部が一緒なのが」と笑顔になった。
「...確かにね」
「鮫島くんがアニメを好きになったきっかけってあるの?」
「俺がアニメを好きになったきっかけか。...まあそうだな。基本的には思春期の問題かな。反抗期だったから」
「...!...そ、そうなんだね」
「ああ。反抗期の問題から抜け出したくてアニメを好きになったんだ」
「大変。反抗期は」
「確かにな」
伊藤さんは「私にも反抗期があったから」と言う。
え?伊藤さんに反抗期?
俺は驚きながら伊藤さんを見る。
伊藤さんは「私、お母さんに...」と言う。
それから涙を浮かべた。
え!?
「あは、アハハ。実は、私のお母さん死んじゃったのも、あって」
「え...あ、そ、そうなんだな...」
「うん。病弱だった。...ある日に心臓発作起こして死んじゃった。...私が悪いんだけど」
「なんで伊藤さんが悩むんだ?それは...違うだろう」
「お母さんに「クソババア」なんて言って傷付けた。だから私が、悪い」
それから伊藤さんは「...その事を...いつも後悔、してる」と言いながら俯く。
その姿に俺は「伊藤さん」と話す。
伊藤さんは「?」を浮かべてから顔を上げた。
そして俺は「...自分を責めないで」と言う。
「...鮫島くん...」
「俺には君の痛みは分からない。...だけど君の痛みを分かりたい。せっかく友人だから」
「...」
伊藤さんは涙をまた浮かべ拭う。
それから伊藤さんは「ごめんなさい」と唇を噛む。
俺はそんな伊藤さんの背中を擦った。
そして「泣きたい時には泣いて構わない」と告げる。
なんというかそれが一番だし。
☆
伊藤さんは俺の励ましに落ち着いた様子だった。
俺は伊藤さんの顔を覗き見る。
伊藤さんは深呼吸しながら柔和な感じを見せた。
その姿を見ながら「大丈夫?」と聞く。
頷きながら伊藤さんは顔を上げた。
「私...情けない」
「情けないんじゃない。...誰だってそんな状況に至れば情けないんだから」
「貴方は優しい」
「俺は優しいんじゃないよ。そう親に叩き込まれただけ」
それから伊藤さんに笑みを浮かべる。
すると伊藤さんは「ありがとう」と話した。
そして時計を見る。
「そろそろ帰る」
「ああ。そう?気を付けて帰ってくれ」
「楽しかった。今日」
「だろうな。またな」
そして俺は一階に降りた伊藤さんを見ながら玄関を開ける。
それから俺は伊藤さんを見送ろうとした。
すると...。
「あれぇ?w」
そう声がした。
ムカつくボイスだったが。
そこに何故か居たのは関奈だった。
何してんだコイツ。
「どうした。関奈」
「いや。偶然だね」
関奈の家が隣ら辺。
つまり関奈と遭遇する可能性は充分にあったが。
コイツの顔を見ているとムカつく。
考えながら俺は眉を顰めていると「あの」と伊藤さんがゆっくり手を挙げた。
それから俺達を見る。
「何かな?伊藤さん」
「私、貴方のその、小馬鹿にする様な、性格は嫌い」
まさかの言い返しに俺は目をパチクリした。
その言葉に「は?」とピクッと眉を顰めた関奈。
それから「どういう意味?」と言う。
関奈に対して伊藤さんは「なんで貴方、偉そうなの?彼を棄てた...癖に」と言う。
伊藤さんの言葉に関奈は「ああ。まあアニメオタクだったし」と言う。
まさかの言葉に「おい!」と俺は怒る。
「関奈!良い加減にしろ!」
「良い加減にってなに?伊藤さんが小馬鹿にしてきたんだよ?それに反論しただけだよ?」
「...」
「ってか話が噂通りゆっくりだね。ウザ」
その言葉に堪忍袋の緒が切れた。
このクソ女言わせておけば!
本性がこんなもんとは思わなかった!
そう考えていると河本は「事実でしょ?私はトロいの嫌い」とニコッとする。
伊藤さんが落ち込んでいた。
「...お前という奴は。縁を切る...絶対にな!」
「いーよ別に。私には大切にしてくれる小太郎が居るし」
そう言いながら俺を見る河本。
俺は眉を顰めながら居ると曇り空になってきた。
河本は「あのさ。いい年こいてアニメオタクってキモくない?」と俺を嘲笑うかの様に見る。
俺は溜息を吐いてから「そうかよ」と吐き捨てた。
「河本。俺は絶対にお前とは断絶する」
「そんな怒らないでよ。当たり前の事じゃん」
「俺がキレているのは俺の事じゃない」
「は?」
「お前は伊藤さんを馬鹿にした」
河本は「...キモ」と言ってから「じゃあまあ」と手を振ってから笑みを浮かべ去った。
俺は「...」となりながら伊藤さんを見る。
伊藤さんは悲しげな感じを見せていた...が。
やがて顔を上げた。
怒りの表情を見せる。
「嫌。あんな人」
「大丈夫か」
「...大丈夫。でもアニメを馬鹿にするのは、許せない」
そう強く言いながら伊藤さんは唇を噛む。
最後の最後に嫌な事があったな。
クソめ。
今直ぐにネット上にでもネタバラシをしてやりたい所だが...。
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