第3話 世界で一番

☆伊藤春風サイド☆


私には幼い頃から判明している発達障害がある。

発達障害の名前は自閉症スペクトラム障害。

幼い頃、私は...あちらこちらを容赦無く走り回る子だった。

落ち着きも無い子だった。

それには理由がある。


ADHDを一緒に持っているから。


だから私は落ち着きが無くて...感情移入が苦手。

でもどれだけ頑張って振る舞っても人は首を振ってゆっくり離れて行く。

私はそんな世界に心を閉ざした。

でも今はそんな事は無くなったけど。


そんな一人ぼっちの私を...笑顔を浮かべて拾い集め救ってくれた人が居た。

同級生の鮫島雪穂くん。

中学時代に同級生の女の子に明るいそんな彼を見ていると心が暖かくなって優しい気持ちになった。

鮫島くんは...気が付いて無いとは思うけどアニメの世界に私を溶け込ませた。


その頃の私は高校デビュー前で少し太っていて1つ編みにしていて服装もブレてブサイクな感じだった。

だから鮫島くんは覚えてないのかもしれない。

でも鮫島くんはアニメの話をよくしていた。


その事もあって私は興味本位で観たアニメにハマった。

中学を卒業して時間が過ぎると鮫島くんは何故か少し控える様に人と距離を置いた。

何故かは分からないけどこの頃から私と彼の立場は逆転していった。


私はアニメのキャラみたいに可愛くなりたい。

それで痩せてから髪型を変えたりして高校デビューをしてしまった私は可愛くなりすぎたらしく。

男の子によく好かれた。

でも私は男の子という存在は当時仕方が無く付き合っていた男の子に暴言を吐かれて大嫌いになった。


そんな中でも私は鮫島くんを...男の子である鮫島くんを本格的に気になり始めたきっかけがある。

それは彼が私を救ってくれた。

きっかけはささいな事。

人混みの中、廊下に落として中身が散乱した筆箱を誰も拾わない中。

彼だけが気にかけてくれて拾ってくれた。


だから私は彼を。


そう思っていたけど彼は彼女さんが居た。

幼馴染さんという可愛い彼女さんが。

私は諦めてその事に拍手をして見ていた。

だがその彼が幼馴染さんに棄てられた。

私は彼の事がまた気になり始めた。


この想いは...もうしないつもりだった。

だけど私にもチャンスがある可能性がある。

その事に胸がバクバクと心臓が跳ねた。

いけないけど。


私は世界で誰よりも彼がスキだ。


本当に大好きだとそう言える。

でも私は...鮫島くんに嫌われたら。

そう考えると絶対に一歩は踏み出せない。

だけど私は言った。

友人として鮫島くん陥落させると。

私にそんな根性は無いかもしれないけど。

でも。


☆鮫島雪穂サイド☆


なんで同級生の美少女に知り合ったばかりにも関わらずこんなに迫られているんだ。

そう考えながら俺は赤面する。

それから俺は伊藤さんを見てみる。

伊藤さんは俺を真っ直ぐに見ていた。


「友人...だよな?」

「そう。友人、だよ?」


伊藤さんはゆっくり立ち上がる。

それからゆっくり歩んで来た。

俺はガタンと椅子を鳴らしてから壁を背に逃げる。

な、なんだ?

彼女から逃げる必要性は無いと思うんだが。


「友人だから私とその。手を繋ぐ、のはアリだと思う」

「え。そ、それは恋人じゃないか」

「さっき握った」

「あれは成り行きで...」

「私、軽い女の子?」

「ち、違う」

「じゃあ手を繋いで、くれる?」


俺は伊藤さんの全身を見る。

彼女は本当に美少女だ。

スタイルも抜群。

胸も大きいし...何より顔が可愛い。

そこら辺のグラビアアイドル。

もしくは本当にアイドルになれる。

だが。


「...分かったよ」


伊藤さんに手をゆっくり差し出した。

すると伊藤さんは俺を抱き寄せた。

まさかの行為に俺は「は?」となる。

伊藤さんが俺を抱き締めている。


「フワフワ。モチモチ...」

「いとうさん!?」

「えへ」


ゆっくり伊藤さんは俺に寄り添う。

俺はまさかの行為に「ちょ、ちょっと待っ」と言うが。

彼女は離れない。

寧ろ...というか女性の香りがする。

なん、マズイだろこれ!?

美少女に抱きしめられて!?


「たんま!たんま!伊藤さん!」

「...これもあくまでも友人としてのスキンシップ」

「え!?」

「友人としてのスキンシップ」


同じ言葉を繰り返す伊藤さん。

俺を抱き枕の様にしている。

その事に何だかイケナイ気分になり伊藤さんを引き剥がしてから困惑して伊藤さんを見る。

伊藤さんは俺を見つつニコッとした。


「伊藤さん。友人としてのスキンシップは分かった。だけど...やり過ぎだ?!」

「私は、言った」

「え!?」

「私はあくまで陥落、させる」

「友人を陥落させてどうする!?」


離れながら俺を見る伊藤さん。

俺はそんな姿にドキッとしながら頬を掻いた。

伊藤さんは移動してまた椅子に座る。

「ゴメン、やり過ぎた」と言いながら伊藤さんは俯く。

俺はそんな伊藤さんに「大丈夫だよ」と言う。


「嬉しかった」

「?」

「俺を...大切にしてくれているんだなって思えた」

「そんな。私が自分勝手な事、しただけ」


それから伊藤さんは「ゴメン」と言う。

俺は「なあ」と聞いた。

すると伊藤さんは「?」を浮かべた。

その姿に俺は顎に触れ「君は...なんでそんなに俺なんかと友人になりたいんだ?」と聞く。

伊藤さんは「アニメが好き同士。だけどそれ以外にも。...私、貴方に憧れた」と言った。


「だから私...」

「...だからなんだな。分かった。ありがとうな」

「うん。だ、だから。あり、がとう」


そして俺達はアニメにまつわる話をした。

それから伊藤さんに俺のアニメグッズコレクションを片っ端から見せる事にした。

全てじゃないが一部を、だ。

せっかく家に来てくれたんだから色々見せてあげたい。

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