第4話 今の気持ち
殿下に見送られて、王宮に帰った。婚約破棄されたとはいえ、まだ私の私物などが残っているからだ。部屋では報告を聞いていたメイド長のゾーラが、
「お嬢様!!ご無事でしたか!?」
と言って、駆け寄ってくる。ゾーラのあまりの心配性に、思わず笑ってしまう。
「ふふ、ただ婚約破棄されただけよ。誘拐されたわけではないのだから、そんなに慌てなくてもいいじゃない」
「はぁ、婚約破棄された後にそんなこと言うの、きっとこの世でお嬢さまだけですよ。しかもなんですか、ただ婚約破棄されただけって。そんな軽く言って!!!お嬢様の未来にかかわるんですよ!!!」
ゾーラが、心配しているのはきっとお見合いのことだ。普通、婚約破棄された令嬢にプロポーズする男性なんていない。フラーム殿下以外は。どうやら、フラーム殿下のプロポーズの話は聞いていないようだ。
「でも、ゾーラ。ーーー」
「でもじゃありません!!!!」
「ちょっと、私のために怒ってくれてるのはわかってるし嬉しいんだけど、話を聞いてちょうだい」
「…内容にもよりますが」
「はい、と言いなさい」
「……はい。」
「よし、あのね婚約破棄の件なんだけど、婚約破棄の後にフラーム殿下にプロポーズされたの」
「………は?」
プロポーズの件についていうとそう帰ってきた。いや、そう帰ってくると思ったけど、は?って、口悪すぎない?
「……お嬢様、もう一度言ってください。空耳が…。」
「えっとね、隣国の王太子、フラーム殿下にプロポーズされたの。」
もう一度言うと、ゾーラが下を向いてふるえだした。もしかして、怒ってる?なんで?
「お嬢様」
「な、何?」
「……なんでそれを先に言わないんですか!!!!!!!!!!」
やっぱり、怒ってる…。だって、ゾーラが帰ってきて早々、怒ってくるから…
「だって…」
「だってじゃありません!!フラーム殿下と言えば、隣国の王位継承権1位の王太子ですよ?ウィリアムズ殿下と同じ立ち位置ですが、頭の出来も業務の出来も違うんですよ?巷じゃ、誰が王妃になるかって令嬢の間でバチバチの戦いがあっているっていうのに。そんな人にプロポーズされたって…。断る人がいるわけないじゃないですか!?まさか、お嬢様振ったんですか?」
ゾーラ、遠まわしにウィリアムズ殿下のこと馬鹿にしてる…、本人がいたらブチ切れそうだな……。
「振ってはないけど」
「じゃあ許可したんですね!?」
「いや、待っててって言った。」
「……お嬢様ーーーー!!!!」
わなわなと震えながら、そう叫んだのだった。
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ゾーラにたくさん叱られた後、お父さまが帰ってきて、
「…レイラがしたいようにしていいからね」
と言われた。表情的にはやつれていて、結婚してくれって感じだったけどそう言ってくれた。だからといって許可をするのは、フラーム殿下に悪いと思う。殿下は、心から愛しているオーラがあふれ出ていた。そう、ダメダメ王子と違って。だからこそ、殿下の気持ちは嬉しいが、ちゃんと考えて返事をしなければ。
そう私は思うのだった。
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