第3話 カラーという花
外に出ると、ひんやりとした空気が肌をさし心地よかった。
「すみません。あのような形になってしまって」
「いえ、大丈夫ですわ」
申し訳なさそうに、フラーム殿下は言った。
中からは、また音楽がなり始めている。有名な音楽が外まで流れる。
「こんなところですが、私と一曲踊っていただけないでしょうか」
私はクスッと笑い、
「ええ、喜んで」
差し出された手をとった。
こういう形で王妃教育が、役に立つとは。フラーム殿下が手を引いてくれたということもあって、あまり気にせず気楽に踊ることができた。
音楽が終わると、二人同時にお辞儀をする。ちょうどその時、
「殿下!!探しましたぞ!!!」
後ろのほうで声がした。
「あぁ、セバスチャン。いい雰囲気が台無しです。どうしてくれるのですか」
「すみません、ってあなた様がいきなりどこに行くかも伝えずに消えてしまうのが悪いのですぞ!!」
「口うるさいですねぇ。レイラ嬢、こちらはわが執事のセバスチャンです」
「ご紹介に預かりました。私フラーム殿下の執事をさせていただいております。セバスチャン・ウラーと申します。以後お見知りおきを」
「私はレイラ・シャーロットと申し上げます。こちらこそお見知りおきを」
「レイラ嬢、ここでは肌寒いでしょう。馬車はどちらに?」
「父がまだ中にいるので。父が出る時間帯までは来ないと思います」
どうしようか悩んでいると、
「それは良かった。では私がお送りします。レイラ嬢馬車に乗ってください」
「そんな!!王太子殿下に、そのようなことは頼めません!!」
「いえ、こちらからお願いしているのです。レイラ嬢をここに残して帰ると気が気でならなくなってしまいます。それとも、私の馬車は嫌ですか?」
捨てられた子犬のような目で見つめてくる殿下を断ることができず、
「……お願いいたします」
というと、殿下は満面の笑みを浮かべた。思わずちょっとかわいいなと思い微笑んだ。
馬車に乗るとふんわりとしたソファーがあった。
「そちらにどうぞ」
フラーム殿下の目の前に座ったのだが、お互い緊張して目を見ることができなかった。今日は疲れたと窓の外を眺めていると、ウトウトとしてきていつの間にか眠ってしまっていた。
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「殿下!!」
「あぁ、レイラじゃないか、そんなに慌ててどうしたんだ?」
「殿下!!ゾーラが、殿下が王家の紋章が入ったブローチを私に持ってきたって、
はぁ、はぁ、ほんとですか?」
「あぁ、ほんとだとも」
「そんな!!わたくしにくれるのですか?」
「はははは、お前以外誰に上げるのだ」
「!!!!もう、殿下!!……ありがとうございます!」
そういうと殿下は私の頭をぐしゃぐしゃっと撫でて、
「将来、私の妃になって支えくれないか?レイラ」
「もちろん!!言われなくても、レイラはずっと殿下の隣で支え続けます!!あっ、
もうすぐルーブル先生が来る時間だ!! 殿下失礼します。ブローチ大切にしますね!!」
「あぁ、頑張ってこい」
殿下のその声を背中で聞きながら、私は走っていった。
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懐かしい夢を見た。王家の紋章が入ったブローチを私にくれた時の夢だ。あの時はとっても嬉しかった。だって、「家族として受け入れる」という意味があるのだから。
「おや、起きられましたか。」
「フラーム殿下、大変お見苦しい姿を見せていまい大変申し訳ございませんでした。」
「いいえ?そんなことはなかったですよ。カラーのように凛とした美しさがあり、時折見せる悲しそうな表情に目を奪われていました」
「!!!!!」
殿下が、恥ずかしいことをさらっと言うので、私は顔を真っ赤にして
「……冗談をいうのはやめてください」
「いえ、冗談なんかではありません。本心ですよ」
なんていうもんだから、もっと顔を赤くさせたのだった。
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