第12話 6.仮面の下 J.D様

企画にご参加ありがとうございます。


まず、語りが面白かったです。

全体を読み終わって逆にこの口調は何のためかと思いました。

読みやすい、あるいは聞きやすい調子というのは仮面の効果の一つかもしれません。


▶︎虐待をされている、その一点を除けば。


教育という免罪符による虐待ですね。物理と精神があります。


▶︎「翔太、お前なんでわかんないんだよ!」

そして一撃、平手打ち。小学4年生の終わりに差し掛かった3月かそこらから、少しずつエスカレートしていきます。


怒りというのは快感につながってますから。


▶︎父の説明は、「あれ」とか「それ」とか、こそあど言葉というのでしょうか?基本それしかなかったのです。

それでも、聞き返すことは許されませんでした。

それは、父の説明はわかりにくいと言っているも同然だから。父を否定すると、

「お前が頭の悪いのが悪いのに、俺の説明のせいにしやがって!」

と、これまた怒られるのです。


これ、職場にもいるのよねぇ。


▶︎「俺が間違ってたって分かって馬鹿にしてるな?顔に出てるんだよ。親を舐めるな」

とのことです。

舐めてるのはお前だろう?あまり子供を舐めないでいただきたい。


そうなんです。怒り狂ってるとね、狂ってるんです。


以降、それによる人間不信描写が続きます。


▶︎あの人が好きだと言ったと思ったら、その人の悪口を言って、かと思えば次はその人と、さっきまで仲良くしていた人たちのことを罵倒しだす。


そうそう。


▶︎あれが好きだと言えば、次はこれが好きだといい、前に好きだったあれは今度は、今代までの恨みと言わんばかりに憎みだして、前に嫌いだったこれは、運命の赤い糸に導かれたみたいな顔してありがたがる。


そうそう。


▶︎いざ私が、

「分かりました。勉強やめます」

と言ったときなんかはそれが最後。夜中ずっと通しで起こされ続け、暴言暴力をふられ続けました。


これ、先生もよくやりますよね。


▶︎なぜなら、他人が何を考えているのか見当がつかないから。

「これ、よくない?まじでさぁ・・・」

などと言われても、なんて返したらよいのでしょう?

どうせそれすら、すぐに好きではなくなるのに、そんなものに執着して、何が楽しいのか本気でわからぬ私に、粋な返しなど出来ません。

面白くもない相槌が精一杯。

「なんて面白くない。あれは阿呆だ」

「あんなのと話すだけ無駄だ。俺達の時間を奪いやがって」

そう、彼らの心から聞こえてくるようです。実際、そこまで考える人間など、世に80億といえどそうそういないでしょうが、自己を肯定できない私には、そう聞こえてきてしまうのです。


ちなみに私は「いつも同じ話だなぁ」と言ってブチキレるタイプです(情緒)


▶︎馬鹿のふりをするのです。

太宰治の言葉を借りるなら、「道化を演じる」のです。


自分の場合、できないふりをする、がありますね。


▶︎そして盛大にすっころんで、パンツを破けさせ(破けやすいようにあらかじめ細工をしていました)、


細工wwwww


以降、絵、やりたいこと、大人になってからのリアルな人間関係が続きます。



まとめ


落語を聞いているような語りのうまさでした。

内容自体は、純文学、一般文芸界隈によく組み込まれているものですが、何にせよリアル。

かつ、変に飾らないところが良かったです。

道化の年季が違うんだぜ!という感じにもとれるし、もはや涙も枯れ果てたくらいに空っぽの軽さを出したとも言える、絶妙なバランスに感じました。

難癖をつけるとすれば、もっと極端に書いてもいいかなと。

逆にこれほどまでに他人を観察し、書けるというのは真に人柄が良いのかもしれないと思いました。

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