第3話

#磯部

#冴えない女の霊会話!?


3話



美咲、愛美、隼人の3人は、署内で、金張哲也に関する情報資料を得るため、資料庫へ向かっていた。その道中、青木に出くわしてしまう。美咲は思わず目を逸らした。



「あぁ!?なんだ!?ここは署内だぞ。関係者以外立ち入り禁止だ!瀬野!貴様、先程対応は終わったのではないのか!」



強い剣幕で迫る、青木に対し、隼人は冷静に切り返す。



「あぁ、すいません。落とし物がタダの落し物じゃなさそーなんで。はい。俺の担当になりましたし、好きにやらせてください。」


「……無駄な仕事ばかりしおって。くだらん。」



青木はそう吐き捨て、去っていく。隼人はそれを、後ろから睨みつつ、静かに決意を固めていた。



「……必ず、白状させる。今に見ていろ。」



そんな様子を横目に、愛美は少し引いて発言する。



「うわ〜。目がマジじゃん……。警察も内部ごたついてんだね〜。ウチもバイトしてた頃思い出すわ〜。今のも、感情剥き出しでバチバチ……」


「……あなたが感情どうこう言いますか。それにあなたのバイトと比べるようなものでは……」



美咲が冷たく発言する中、隼人が資料庫の鍵を開ける。そのまま隼人が、慣れた手つきで、棚にある資料を引っ張り出す。



「……金張哲也。前にどこかで……」



隼人がそう呟きつつ、大雑把だが手に取った資料をめくっていた。

美咲はどうしたらいいか分からない上、隼人に話しかけられずに、少し戸惑っていた。



「あ、ねーねー!ウチらもなんか探した方がいい感じ〜?」



愛美が資料庫内の冷たい雰囲気に、似つかわしくない大きな声で、隼人に尋ねる。



「ん、あぁ。そうだな。出来れば3年程前の、取り調べの資料について調べて欲しいが……。そもそもお前は、資料に触れるのか……?」



隼人の冷静な返しに、頭をわざとらしく、自分でこついて、舌を出す愛美。



「あ、そうだったそうだった!笑 ウチ触れないや笑笑 3年前ね〜!りょ〜。見つけることは出来っから任せてよ〜!」



その後、美咲に目線を送る愛美。礼なら要らないよ。と言わんばかりの顔だ。



「言いませんよ……。あなたが居なければ、こんなことになってませんから……それにしても……前科でもあるんですかね……。」



美咲は目を背けつつ、3年前の資料を探し始める。愛美はそんな様子をニヤニヤしながら見ていた。美咲の顔が少し、赤くなったのを、見逃さなかったのだ。


時間が過ぎて、日も暮れてきた。美咲、隼人は資料を漁り、愛美は退屈そうに欠伸をしている。

すると、隼人が目的の資料を見つけたようで、少し大きな声を出しこちらに顔を向ける。



「これだ。」



3人は資料に目を通す。取り調べに関する記録で、金張の勤務しているホストに、通っていた客の死について、取り調べを行った記録のようだ。



「やはり……1度だけ……取り調べをしていたような、記憶があった。黙秘し続けていたが……な。結局、金張を指名していた客というだけで、この客の自死との関与は不明のまま……」



隼人は一拍置き、さらに続ける。



「にしても、情報がこれだけでは、どうする事も出来んな。」


「待って、私もこの話知ってるかも……なんか重要な事思い出しそうなんだけど……うーんと……」



唸る2人をチラチラ見ながら、美咲はブツブツ一人で呟く。



「……ホストクラブへ直接赴けば……何か情報を得られたりしませんか?」



伝えたいけど、直接伝えるのが気恥しいのか、聞こえるか、聞こえないか 絶妙なラインで話す。そう、美咲はこのようなイケメンと、直接会話する機会など今まで一度もなかった「冴えない女」なのだ。


愛美は、考えるのを止めて、ニヤつきながら美咲の真似をするかのように、腕を組んで、同じセリフを繰り返す。



「……ホストクラブへ直接赴けば……何か情報を得られたりしませんか?」



愛美らしくない口調に、美咲が思わず顔を上げ、『えっ』と口に出してしまう。この女、確実にわざとである。



「ホストクラブに、警察が情報収集、ってか……?3年前の取り調べと、結果変わらず黙秘される気がするが……」



隼人がそう話した後、美咲は愛美の方に向き直り、

顔を赤らめつつ、小声で話す。



「……伝えてくれた事に関しては礼はいいます。ありがとうございます。あの、さっきのも含めて礼を言えばいいですか……」



愛美はまたニヤニヤしながら、美咲の方を見て一言。



「お礼なら、みさきちが……ウチのこと、まなみんって呼ぶってのはどう?笑笑」



この笑顔……昨日の、美咲の秘密を見つけた時と、同じ顔だ。それが、どうにも腹が立ち、美咲はこう言い返した。



「……いいえ、呼びません。あんまり調子に乗らないでください。言っておきますが、貴方のようなバカに振り回されてる、こちらもしんどいんです。少しは立場を考えてください。」



そう早口で、捲し立てる美咲に対し、愛美も、少しムッとした顔で言い返す。



「あ!バカってひどい!昨日の言いふらすよ!」



美咲は一瞬で、あのPCの事だと推測し、愛美の方に飛びかかり、抑えようとする。



「……この!」



愛美の口を塞ぐように、反射的に動いてしまう美咲だったが、



「当たりませんよ。」



愛美は、美咲の真似をしつつ、美咲から顔を背けた。



「人をおちょくるのも大概に……!」



美咲が、怒りで愛美を、追いかけ回し始めてる中、隼人は一人で呟きつつ、考えていた。



「さて、話が逸れたが……どうするか……」


「ホストクラブの名前は!」



微かに隼人の声が、聞こえていたのか、走るのをやめ、振り返り大声で、返答をする美咲。

それに呼応し、隼人も少し大きな声で返す。



「奴の勤務先は、KING という、ホストクラブだったはずだが……。あぁ、あと、余計なお世話かもしれないが、俺は見えてるからいいが、外では……控えた方がいいんじゃないのか?一人でなんか走り回ってる事になってると思うぞ」



隼人に冷静に状況を述べられ、我に返る美咲。



「……!情報収集が、早いですね。」


「そう気を落とすな。俺もここまで干渉してくる奴は、初めてだからな……少々戸惑っている」



美咲は、俯きつつ隼人の元へ、

すると愛美が、驚いたような様子で、こちらに割り込んでくる。



「……!え、KING?マジ……?え、待って、めっちゃいいこと思いついたかもしんない!」



愛美は、隼人の顔をまじまじと見る。その行動、距離感に対して、隼人は戸惑っている。



「おい……どうした……。近いぞ……!」


「うん、絶対イける!サイキョーじゃん!」



ウキウキで1人歩きをし、離れていく愛美に、嫌な予感が走る隼人。



「おい、まさか……」


「ウチの、サイキョーの秘策……!それは!」



愛美は指を1つ立て、ウインクしながら、隼人に向き直るのだった。


ー続くー

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