異世界転生モノを嫌う高校生作家・晃が飛ばされたのは、彼が最も嫌悪する14世紀フランス。しかも魔法もレベルアップもない、糞尿と疫病が蔓延する"本物の中世"だった――
この作品の魅力は非合理な世界で知る真実です。「病は家族の罪」とされる時代で、現代知識は全く役に立たず、皮肉という防御壁も通用しない。そんな極限状態で晃が出会う薬草を集める孤独な少女アニエスとの関係性が秀逸です。
最初は衝突ばかりの二人が、死に瀕した老巡礼者から「妻への愛のメッセージ」を託されたことで運命共同体に。晃が最も嫌う「クサいヒューマンドラマ」こそが、生き抜く力になるという皮肉な展開が胸を打ちます。
現代の親子関係の問題と中世の過酷な旅が交差する構成も巧み。「愛と絆」という重すぎる荷物を背負った二人の巡礼が、どんな結末を迎えるのか――