渇き
ポヨン…ポヨン…
双喧の前方から跳ねてくるゼリー状の魔物。
RPGでお馴染みスライムである。
ゲームにおいては最弱といえど、あくまでもそれはゲームでの話。
現実のダンジョンでは厄介な存在として、探索者からは嫌われている。
弾力性に富む身体はあらゆる攻撃を減衰させ、地面や壁などに叩きつけようとも身体を揺らして衝撃を逃がすため、厄介極まりない。
そんなスライムでも、双喧にとっては障害になりえない。
「業火よ、広がれ!押しつぶせ!」
手のひらのように広がった炎がスライムを上から押しつぶす。
いくら衝撃を逃がそうとも水分豊富な身体を押さえつけられながら焼かれてはスライムも堪らない。
スライムも塵と化し、スライムの溶液がその場に生成される。
溶液を容器に入れながら、双喧は心躍る強敵を求める。
「あぁ…、どっかに強ぇヤツはいねぇのか?」
双喧の心は渇ききっている。
双喧の心を潤してくれる存在を求めて、更に下層へと降りていく。
◆◆◆
マテルダンジョン26階層。
そこは今までと打って変わって、灼熱の地が広がっている。
双喧の前に居るのもラヴァマンというマグマで身体を構成されている魔物である。
ラヴァマン達は4体で双喧を取り囲む。
「へっ、燃える身体に俺の炎が効くか試してやるよ」
ラヴァマン達は緩慢な動きではあるが、双喧に襲い掛かってきた。
動きは確かに緩慢だが、その身体はマグマそのものである。
まともにやり合えば、こちらが溶かされてしまうことだろう。
しかし、ラヴァマン達の相手は濃紺の獅子堂双喧。
コイツは一味違う。
「
双喧の声に反応して、炎が獅子の姿を象る。
その炎獅子に包まれたラヴァマンはその身をよじる。
本来なら、効かない筈のラヴァマン達に炎は纏わりつきその身を焦がす。
ラヴァマン達は焼け焦げる身体を無理に動かしながら、双喧を倒そうと近づいていく。
ソレを見ながら、拳を握る。
「
双喧の炎を纏った連撃の前にラヴァマン達は、手も足も出ない。
「
ラヴァマン達に拳が当たった瞬間、炸裂する火花と業火。
塵と化しながら、飛んでいくラヴァマン達。
やがて、空中でその身体をアイテムへと変化させながら落ちていく。
「マグマでも俺の炎には敵わねぇか」
不満そうに乱杭歯を見せながら、双喧は唸る。
双喧の目の前には、先程の炸裂音を聞いたのか、魔物達が集まっていた。
それを見ながら、笑う。
「おいおい、お代わりたぁ嬉しいねえ。食べ放題なんてワクワクするじゃねえか!」
炸裂音と閃光が入り乱れながら、魔物の唸り声と双喧の笑い声が響き渡る。
まだまだ双喧の食事は終わらない。
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