救助者

身体が強く揺れている。

意識が…、確か少年に…。


「おい!しっかりしろ!」


男性の声?

少年のではなく、壮年の男性のような…?


「おい、聞こえているか!?」

「相馬さん、その子は?」


ゆっくりと目を開ける。

視界に入ってきたのは、壮年の男性と若い女性。


「…ッ!気が付いたか!起き上がれるか?」


背中を支えられながら、ゆっくりと身体を起こす。

見知らぬ人達に介抱されている仲間を視界に収めながら、男性に問う。


「あの皆さんは?」

「お前達の救助を依頼された。俺は相馬。『カモシカ』のリーダーをしている」


『カモシカ』の相馬と名乗った男性は、仲間達を見回しながら、


「お前達の傷はあらかた治した。お前達が何者かに襲われていると報告があったのだが、何があったんだ?」


私は、そう言われ少年の笑みを思い出す。

あの時の少年の笑みは、まるで何か面白いことを前にしたみたいだった。

私が少年のことを話すと、相馬さんは、


「ふむ…迷賊と思って攻撃したのはダメだが、攻撃されても笑みを浮かべ続けたのは気になるな…」


金髪ピアスの男性が相馬に近づきながら言う。


「相馬さん、こっちは終わりましたよ。あとは、その子だけですね。」


金髪ピアスの男性は私を見ながら、


「心身を、癒やせ。」


と唱える。

すると、少しばかり傷んで震えていた身体が治る。


「どうっすか?治りました?」


私は驚きながら頷く。


「あ、俺の姿見てヒーラーかって思ったでしょ?」


いや、確かにそれも思ったが、そこでは無く。

心身を同時に癒やすのは難しいはず。

美月でも心と身体を同時に癒やすことはできない。


「落ち着いたか?」


相馬が問う。


「そうかい。じゃあ、一旦外に出ようか」


そう言って、『カモシカ』のメンバーに指示を出す。


「張間はいつも通り斥候、俺がその後に続く。その後ろに少女達。青木が真ん中で護衛。その後ろに大間、殿が源だ!」


相馬さんがこちらに振り返りながら、


「んじゃ、行くか!」


私達はその後『カモシカ』の護衛によって、ダンジョンから脱出できた。

その後に、ダンジョン局の職員さん達から事情聴取と迷賊か判明する前の攻撃行為に対する厳重注意を受け、帰路についた。

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