第2話
秘密倶楽部を経営するオーナー、流川さんは私の部屋にやって来ると、私を抱いた。
流川さんの色、女をしてる。
商品に手を出すのは、どうかと思うが私は、流川さんに借金があるし、媚を売っといて損の無い相手だった。
皐月くんを私の監視役にしたのは、流川さんらしいから、信頼してる部下だと。
流川さんは三十代前半から半ばくらいで、健康的な肌の色をしていて、鍛え抜かれた筋肉が付き。
ヤクザらしく、彫り物をしていて。
背中全体に不動明王がいた。
流川さんとキスをしながら、流川さんの股間に手を伸ばして、スーツのズボンの上から撫でた。
舌を絡めて段々と、反応して窮屈になって来たズボンを脱がした。
今度は下着のパンツの上から撫でて、優しく愛撫を続けてあげた。
先走りで濡れて来て、やっと直接触ってあげて私は口を開いて、喉の奥まで咥え込んだ。
唾液をたっぷり絡めて、音を立て口淫をしていった。
私はパジャマを脱いで、流川さんの腰に跨った。
「んっ。」
手で支えて、膣内に挿入した。
奥まで飲み込んで、腰を動かして粘膜で締め付けた。
私の動きに合わせ、ベッドが軋み音を立て水音が耳を犯した。
肌がぶつかり合い、ぱんぱんと音も立てた。
「あ〜、イク!イッちゃいますっ。」
「俺はまだ、だ。我慢しろ。」
我慢しろと言われたので、腰の動きと締め付けを調節して我慢した。
流川さんが私の腰を掴み、最後の追い上げだと、下から激しく突き上げて来たので、私は絶頂に達して流川さんは、私の中で射精して果てた。
「昨日はごめんね。」
朝ご飯を運んで来てくれた、皐月くんに私は謝った。
皐月くんはテーブルセッティングを済ませると、早々に退散しようとするので、昨日の今日で警戒されていた。
意識して、気にはしてくれてる……?
私では無く上司の流川さんを、かも知れないが。
「これから、本気で皐月くんを落としに行く。覚悟してね。」
そう言い、私は笑みを浮かべた。
皐月くんの手を引き、ベッドに押し倒した。
シャツとベストのボタンを外すと、真っ白で綺麗な胸と腹が露わになった。
乳首はピンク色で美味しそう、腹筋は割れていて男らしかった。
乳首にしゃぶり付いて、舌で転がして甘く吸って。
歯を優しく立てると、皐月くんは色を孕んだ吐息を漏らした。
乳首から口を離して見ると、ピンク色が濃くなり私の唾液で濡れていた。
もう片方の乳首も可愛がった。
腹筋を撫でて、舌を這わせた。
腹に力が入り、筋肉が反応した。
ベルトに手を掛けたところで、私は皐月くんに止められた。
……残念。
「今日はここまでにする。お仕事の邪魔してごめんね。朝ご飯は食べたら、外の廊下にお皿を出して置くね。下がって良いよ。」
皐月くんはボタンを留めて、身なり整えると私の部屋から出て行った。
ベッドに倒れ込み、天井を見上げた。
いやぁ、想像以上に色っぽかったな……。
肌が真っ白な分、血色が良くなって赤く色付いていた。
私は唆られて、益々その気になった。
「菜奈様ッ!最高の気分で御座います!!」
「豚が喋るんじゃないよ。」
「ブヒっ。」
客は可愛く鳴いた。
裸で四つん這いになる男の背中を、鞭で打って言葉責めをするプレイの最中だった。
この客はキャリア官僚で国家公務員。
お堅い仕事の人程、夜は乱れるんだよね。
客の体を打ち言葉責めで、気持ち良くさせてあげるのも仕事だ。
本名の菜奈でそのまま、女王様をしてるから女王様とか、菜奈様とか、菜奈女王様と呼ばれていた。
隣の部屋で皐月くんは、この状況をモニタリングしてる。
セーフティワードを決めてるので、余程の事が無い限り、問題は起きないが、客が私に危害を加えようとすれば、皐月くんが止めに入った。
監視役は働く女を守る仕事でもあった。
私の客は金払いの良い、良い人ばかり。
チップを弾んでくれるし。
秘密倶楽部の従業員は丁重に扱った。
噂に聞くと、プレイが気に入らなかったとクレームを入れて、ケチを付けて来る、器の小さい男がいるらしい。
プレイ後は返金不可なのに。
金を持ってるんだから、出せば良いのにさ。
下に見てるから、舐めた態度が取れた。
必死に腰を振って、無様な姿を晒しておきながら。
私には関係無い話だから、別に良いんだけど。
舐めた態度の顧客の会員には、お仕置きがされるか、退会させるシステムになってるが、それだけでは終わらない。
職場に録画されたデータが送られたり、奥さんとか子供にお父さんの仕事ぶりを見せた。
職場をクビになって、家族から捨てられたら、甘い顔をして近付き、ギャンブルの味を教えちゃったりした。
で、すっからかんになったら、金を借りさせる。
ヤクザって、恐ろしいよね。
本当、気を付けないと。
生命保険で借金を返させるんだから。
私が一日に客を相手にするのは、一人か二人だった。
昼と夜の二部に一人ずつで、プレイの時間は長いが本番NGの女王様。
一人一人の客に、誠心誠意に向き合えた。
朝昼晩の三食食べて、仕事終わりの夜はゆっくりとお風呂に浸かった。
ベッドに入るのは、遅くても日付を跨いだ零時で。
流川さんが部屋を訪ねて来れば、起きて相手をした。
流川さんに飼われてる女なので。
私は秘密倶楽部で働きながら、早寝早起きの規則正しい生活を送っていた。
休みの日には、仕事で使うボディスーツや、網タイツ、ハイヒールを新しく、買いに行った。
客を喜ばせる為の必要経費だ。
別のSM倶楽部で働いてた時から、アダルトショップの常連で、仕事道具を揃えに行ってた。
通販でも良いけど、自分の目で見て買いたかった。
一応、プロなのでこだわりがあった。
本番行為を一日に、何人も相手にする女は働ける期間が短かった。
そう言う女は最下層で、使い捨てにされた。
金を稼げなくなれば、用済みになった。
処分されるだけ。
骨まで溶かされ、何も残らない。
生きていた証拠は、消えてしまう。
戸籍の無い人や、身寄りの無い人は。
例え捜索届が出されていても、警察は動かない。
秘密倶楽部は、警察のエリートを顧客に抱えてるから。
そもそも、事件性が無ければただの失踪扱い。警察は暇では無かった。
誰も助けてはくれない。
自分の力で、どうにかするしか。
飼い殺し。
ヤクザに、食い潰される前に。
赤ちゃんプレイは面白い。
おしゃぶりに、よだれ掛けをして。
成人男性が赤ちゃんになってるんだもん。
「ミルクの時間ですよ。」
粉ミルクを沸かしたお湯で溶かして、哺乳瓶に入れて人肌に冷ましてから飲ませてあげた。
飲み終わると、良く飲めましたと頭を撫でて。
褒めてあげる。
私はバブバブ言ってる、赤ちゃんのママになった。
赤ちゃんなので、プレイの最中は会話が出来なかった。
シチュエーションに忠実なのが素晴らしい。
赤ちゃんプレイも人気で、何人ものママになっていた。
泣き出すと、おむつを取り替えてあげて。
絵本を読み聞かせて寝かし付けたり、ベッドに一緒に横になり胸を貸してあげた。
胸に顔を埋める赤ちゃんの背中を、とんとんと優しく叩いて癒しの時間を提供した。
客は満足して帰って行く。
マザコンだけど、本当のママには甘えられないから、私をママにしてプレイを楽しんでた。
外では強い男であれって、厳しいもんな……。
男らしく、とか。
男の人は大変。泣くと怒られるし、弱い男だとレッテルを貼られた。
弱さを見せるな、日本男児たる者って。
今だに古い考えがあった。
誰にも甘えられず、苦しんでる人は多かった。
心の扉を開いて、自由に開放させてあげるのが、私の一番の仕事だった。
従順な犬には、首輪をプレゼントした。
客の中には女王様の所有物の印だと、『菜奈』と私の名前を体に入れてる、人なんかもいた。
奴隷精神が、骨の髄まで染み付いてた。
自分の体は大切にして欲しかった。
散々痛め付けて、責めまくってる私が言うのは、説得力に欠けるけど。
別のSM倶楽部で働いてた時、私を雇ってくれた店長から言われた。
私は女王様の才能があるって。
母性がある、のかな。
男を包み込む、包容力があるらしかった。
心を開いて、身を委ねたくなる様な。
自分では良く分からないが。
自分の仕事に誇りを持つ。
それが、大切な気がした。
女王様として努力を重ねれば、結果は自然と付いて来た。
苦境に負けない、強い精神的なところも、合ってたんだと思う。
たまたま、私には天職が見つかった。
その所為で、ヤクザに目を付けられるハメになった。
それが良かったのか悪かったのは、これからの私次第で。
終わり良ければ全て良し、だもんな。
プロセスはどうであれ、結果が全ての世界だ。
流川さんは経営者として優秀。ヤクザとしても、追い込みに余念が無い。
惚れ惚れする、才能だった。
私は経済力のある、強い人が好き。
心惹かれる、タイプなのは違い無かった。
体の相性も良いし……。
どうしたもんかねぇ。
ヤクザに惚れてる場合では、無いんだよなぁ。
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