秘密倶楽部

うみ

第1話


隠しカメラが設置されていて、行為を録画をされてるが客は知らない。


そのテープが使われるとした脅迫して、思い通りに動かしたい時であった。


パワーゲームと言うか、顧客は秘密倶楽部に弱味を握られていた。


急所の金玉を文字通り。



信頼関係があってこそ成り立つ商売なので、無闇に使ったりはしなかった。


秘密倶楽部は裏の世界と繋がっていた。



日本で最大級の組織である、東龍会が経営に関わり。


紹介制で会員は金持ちばかりだ。



警察の選ばれし、エリートまで顧客に抱え。


ズブズブの関係だった。



そんな秘密倶楽部で私は働いている。



私の客はドMばかりで。


金を稼ぐ能力が高い、良い男ってマザコンでドMなんだよね。


可愛いから、愛してあげた。



自称ドSもいるが、調教したら従順な犬になった。


私の排泄物を強請ったりする。


楽しくお仕事をしていた。



秘密倶楽部は店舗を持っていなくて、船が港に停泊して客を乗せて商売を行う。


普段は船で生活していて、休みの日には船から降りて買い物やご飯を食べに行った。


私は比較的、自由が許されてるけど、外に出る時は監視付きだった。


話し相手と荷物持ちに、丁度良かった。


監視役は私が客の相手をしてる間、隣の部屋でモニタリングして、問題が起きれば、鍵を開けて中に入った。



親や夫に売られたり、男に騙されて連れて来られた子達は、悲惨な運命を辿った。


船の部屋に監禁されて、体を無理矢理売らされた。


個室の部屋は防音がしっかりしてるから、外には音が漏れないはずだが、悲痛な叫びと泣き声が聞こえて来る気がした。



私の監視役の皐月くんは、東龍会の人間なのでヤクザであった。



父親が事故を起こし、被害者から訴えられて、損害賠償を請求された。


私はそれ以前から、別のSM倶楽部で働いてたが、金に困ってると聞き付けると、秘密倶楽部にスカウトされた。


それは救いの手では無く、地獄に手招いていた。


父親の事故は私を引き抜く為、意図的に起こされたのではと勘繰り。


ヤクザならそれくらいやった。



嘆いても仕方無いので、私は自分の仕事をした。


ヤクザに目を付けられたら、抵抗せずに身を任せるのが定石。


逃げ出そうもんなら、地の果てまで追い掛けて来そうだもん。


金になるうちは、丁重に扱ってくれるし。


私は稼ぎ頭で、馬車馬の如く働いた。



女王様は天職だから、苦では無かった。


船にある私の部屋は、私好みの調度品を誂えて快適だ。


私が乗る船は、大きくて豪華客船って言葉がピッタリで。


秘密倶楽部の顧客は金持ちの、VIPばかりなので当然と言えば当然だが、人身売買のオークションも行われてるので、非合法の巣窟であった。



「ぼくの女王様、またお会いしに参ります。」


私の網タイツを履く足に頬を寄せて、うっとりする表情を浮かべる男は、私の父親と同年代で会社を経営する社長だった。


既婚者で家庭と仕事のストレス、やばそうだもんなぁ……。


私と同じ年頃の娘を持つ、父親でもあった。



私は誠心誠意、麻縄で縛ってあげた。


SM用のロウソクを使い、体に垂らしてやると悦んでた。



鞭を振るうのも得意で、利き手の腕の筋肉は鍛えられた。


正確に同じ場所に、鞭を振るうにはコントロールが必要で、良い女王様になるには練習あるのみ。



道具の手入れを怠らず、女王様は奴隷に尽くす。


やっぱり、ドSのSはサービスのSって感じ。



仕事が終わったので、仕事部屋から出て私に与えられてる部屋に行って、お風呂のお湯を溜めてゆっくりと浸かった。


皐月くんは客を船の外まで、お見送りするのも仕事だから席を外していた。



後は浣腸してアナル開発から、赤ちゃんプレイでママにもなった。


プレイの最中、私は一切脱がない。


本番NGの女王様なので。



股を使って稼げるのは、短い期間で性病の危険性が。


無理矢理働かせてる子は、仕事を選べなかった。


強制的に本番行為をさせられた。



中には金を払ってまで、女の子の骨を折りたい変態さんがいたり。


お婆さんの萎びたおっぱいが好きとか。



秘密倶楽部には多種多様な客がいた。




私の客は私にとって、良い人ばかりだけど、他の客は金さえ払えば何をしても良いと、人権を無視して人の命が金より軽かった。


事実、金さえ出せば、なんでも望みは叶った。


人を買って性奴隷にするのも、人の命を奪うのも。



皐月くんは私より年下で、まだ若いけど東龍会の中である程度、地位が高いところにいそうだった。


気配りが出来て、聞き上手で暇潰しに付き合ってくれるので、私は助かっていた。



かと言って、気を許せる相手では無かった。


弱味を見せたら、食われる。



そんな緊張感も心地良かった。



船の中にはシェフがいて、私はいつも魚と野菜中心のメニューをお願いしていた。


お風呂から上がったところで、ドアがノックされ、皐月くんが夜ご飯を運んで来てくれた。


「どうぞ。」


「失礼致します。」


ドアを開け招き入れた。


テーブルのセッティングをしてくれてる間に、私はバスローブを脱いで、シルクのパジャマに着替えた。


腕の良いシェフが雇われていて、ナイフとフォークを使い、バターでソテーされた魚と、シンプルな野菜のグリルを食べた。


味付けは塩とオリーブ、少量のスパイスが使われ。


お酒は飲まないので、軽く夜ご飯を済ませてベッドに入るのが、私のルーティンだった。



ウェイターの様な格好をしていて、皐月くんは蝶ネクタイを付けて、ベストを着てるのが常であった。


シャツにはアイロンが掛けられ、シワが無く伸ばされ、スラックスは折り目がきちんと付いてた。


髪型はオールバックで、肌が白くて綺麗で。


顔は俳優みたいに、整っていた。




食べ終わりお皿を下げ様とする、皐月くんの手を掴んだ。


体温が低くて、冷たかった。



手を掴んだまま、皐月くんを見上げた。


下から見ても、綺麗な顔をしていて。


何を考えてるのか読めない、色素の薄い瞳と視線が絡んだ。


ビスクドールに嵌められた、ガラス製の瞳みたいで。



皐月くんには、白人の血が混じってると思う。


確かめた事は無いが、恐らくは。


肌の色は真っ白で、血管の色が透けて見えた。



皐月くんを買いたいと、声を掛けて来る客がいるくらいだった。


美青年を好む客もいた。


皐月くんはお断りしてたが。



皐月くんは東龍会のヤクザで、私の監視役で敵、なんだろうな。


この人を虜にして落とせたら……。


良い方に転ぶかは、やってみないと分からなかった。



私は身持ちが堅いが、使いどきには惜しまず体を使った。


女王様にも、ママにも。



ただの恋する乙女にもなれた。


変幻自在で、演技力には定評があった。



どれも私なので、嘘では無かった。




皐月くんの手を引っ張ると、体勢が崩れて私に覆い被さった。


私は皐月くんの影の中に入り、空いてる方の手でテーブルに、皐月くんは手を突いたので皿が音を立てた。


「……何か、ご気分を害されました?」


「ううん。ご機嫌だよ。」


皐月くんは離して欲しそうに、私が掴む自分の手を見た。


皐月くんの手は、指が細長くて爪の形が綺麗で。


繊細ながら男の人の手だった。



金を稼ぐ商品なので、私の手を乱暴に振り払ったりはしなかった。


買い物の荷物持ちをしてくれたり、ご飯を食べるのに付き合ってくれたり、私の機嫌を損ねたりは絶対にしない。



指をゆっくりと、一本一本絡めて。


恋人繋ぎをした。



「あの……、」


「ん?」


「手、離して下さい。」


「え〜?どうしよっかなぁ。」


繋いだ手を口元に持って行き、手首を返して皐月くんの手の甲に、リップ音を鳴らし唇を落とした。


舌を出して這わせると、皐月くんは手を引っ込めた。


「……戯れはやめて下さい。」


戯れ、ねぇ?



「本気なら良いの?本気で好きなら、良い……?」






「……逃げられた。」


ベッドにダイブして、枕に顔を埋めた。


皐月くんは手強い……。


自分の美しさを良く理解していて、それを利用する術も知っていた。


う〜ん。どうしようか。


頭を悩ませる。


皐月くんを私にメロメロにするのは、骨が折れそうだった。



寝返りを打ち、天井を見上げた。


船の中だが大きな船なので、海が荒れてる時以外、揺れはそんなに感じなかった。


私は船酔いしないし、外とあまり変わらなかった。


窓が無い部屋だから、海は見えなかった。



秘密倶楽部を経営するオーナーに、借金があった。


父親が事故を起こし、被害者が怪我を負い入院した。


医者から診断書が出て、治療費に加え損害賠償を請求された。


被害者はガラの悪い男で、当たり屋だと踏んでいた。


怪我の所為で働けなくなったと、馬鹿みたいな額を要求された。


私の父親は人が良いと言うか、人に騙されやすい性格で。


これまで連帯保証人にサインして、借金を背負わされたり、変な商法に引っ掛かったり。


散々な目に遭っていた。



私の母親は、夫と娘の私を捨てて、男を作って逃げた。


借金取りがしょっちゅう、アパートの部屋に来た。


私が前に働いてたSM倶楽部は、その借金を返済する為に就いた仕事だったけど、私に向いてる天職だと思った。


私を必要としてくれるのは、気弱な父親だけで。


そんな父親を放っては置けなかった。



女王様になると、客は心を開いてくれて。


私に屈服して、信頼を寄せてくれた。



それが嬉しくて、どんどん技を磨いた。


売れっ子のNo.1になった頃、父親が事故を起こした。



秘密倶楽部のオーナーは、金主もしていて言葉巧みに父親から、金を借りさせた。


で、私はスカウトされて秘密倶楽部にやって来た。



私が逃げたら、父親は臓器を取られるか、マグロ漁船にでも乗せられそうだ。



オーナーは東龍会会長の息子で、大幹部って言うやつなのかな。


ヤクザの組織図には明るく無いので、良く分からないが、兎に角、裏社会で偉い人。


逆らったら首が飛ぶ。


比喩では無くて。



私は父親が人質に取られてるし、逃げても行くところが無いから、大人しく秘密倶楽部で働いていた。



稼ぎ頭なので、まあまあ優遇はされた。



仕事部屋の他に、私の個人の部屋があったり。


好きな料理をシェフにお願い出来たり、前の生活よりは格段に質は上がった。


部屋代やら食事代で贅沢させて、借金に上乗せさせられてるんだけどね。



流石、ヤクザはやる事がエゲツない。



私は長い黒髪と、赤い口紅がトレードマークで。


黒のボディスーツに網タイツ、ハイヒールで想像しやすい、女王様じゃ無いだろうか。



ハイヒールで顔を踏まれたいとか、金的をご所望されたりもした。











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