苺パンツはご主人様の〇〇に帰りたいのです。

佐藤ゆう

第1話 ゴッドパンツ

 付喪神――。物には精霊が宿るという、日本古来から信じられている神的現象。


 それが『苺パンツ』だとしても、例外ではない。


 ◆


 神奈川の住宅街のマンション――。


 平均的な家賃で貸し出されている一室に、女子高生 『安奈 くりす』が慎ましく暮らしていた。


 田舎から上京して、ここで半年ほど一人で暮らしているのだ。


 今日は学校の休みで、洗濯して洗い終わった衣服をベランダに干していた。

 お気に入りの『苺パンツ』を、るんるん気分でカラフルで可愛いハンガーにかけた。


 ―― ピ ピ ピ ピ ピ ッ ――


 タイマーの鳴ったスマホを手に取った。


「もう12時か……。 今日はひさびさにマックでも食べようかな♪」


 くりすはベランダから出て、スマホでデリバリーサービスの注文サイトを開く。


 スマホに気取られていた時、ベランダに突風が吹き荒れ―――


 カラフルハンガーがガタガタと揺れて、かけられていた『苺パンツ』が風で吹き飛ばされた。


  うおおおおおおおおおおっ!


 ぐるぐると回転しながら数百メートル先の公園の『木の枝』に引っかかった。


 苺パンツの付喪神『 いちご 』は目を回しながら、木の枝によろよろと立ち上がり、遠方に見える安奈 くりすが住むマンションを眺めた。


「――必ず、オレは『あの場所』に帰ってみせる!」


 気合を込めて、木の枝からひらひらと舞い降りた。

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