第19話:ギルドとかあるんやね
イルザリア王国――。
巨大な白い城壁が朝日に輝き、王国最大の大都市としての威容を放っていた。
門へ続く大通りには人々の活気があふれ、商人、冒険者、兵士、獣人、魔族、見たこともない種族まで入り乱れている。
俺はその光景に思わず見とれた。
「すげぇ……! 前の国とは比べ物にならないな……!」
隣でサクマが大きく頷く。
「そりゃそうだ。世界五大王国のひとつだし、軍事も経済もトップクラスだからな!」
「なんで知ってんだよお前」
完全体ヴァリシアは周囲を警戒しつつ、柔らかな声で言った。
「アレク、サクマ。人が多い場所では気をつけて進もう。
とくに……サクマ、ドングリは触らないように」
「いや、触らないよ!? 城門前で国家終了したらシャレにならんからな!」
そんなやり取りをしながら、俺たちはようやく王国の門前へ到着した。
しかし――問題がひとつ。
「……で、王国に着いたはいいけど、まず何しよう?」
入国はしたものの、目的地は決めていない。
道は広く、店は多く、人はどこへ向かえばいいのか分からないほど動いている。
サクマが腕を組んだ。
「うーん……宿探し? それとも食事?」
「いや、先に情報収集のほうが良くない?」と俺。
すると完全体ヴァリシアが静かに指さした。
「アレク。あれを見て」
視線の先に――
城門へ続く大通りの途中、ひときわ目立つ建物があった。
巨大な看板に書かれた文字。
《アンサーガールズ》
中には活気のある冒険者たち、受付らしき女性たちが慌ただしく走り回っている。
どうやらギルドのようだが、名前が変に可愛らしい。
サクマが看板を読んで目を細めた。
「アンサーガールズ……? なんだこのギルド。名前はふざけてるけど、立地は一流だぞ」
「王国の門の正面って時点で絶対ただ者じゃないよな……」
俺たちは自然とその建物の前へ歩いていた。
完全体ヴァリシアが扉の前で立ち止まり、俺たちに言った。
「アレク、サクマ。ここなら王国についての情報が得られると思う。
城下町の仕組み、危険地域、魔王軍の動き……。
あなたたちの旅に必要なものが全部揃っているかもしれない」
「だな。ここで情報集めてから街を動いたほうが安全だろう」
サクマがうなずき、俺も深呼吸する。
そして――
「よし、行くか」
三人で扉に手をかけた。
すると中からすごい声が聞こえてくる。
「お客様相談は右側でーす! ドラゴン対処の依頼は左側!
恋愛相談は2階奥でーす!!」
「恋愛相談あんのかよ!?」
「ギルドってなんだっけ……?」
完全体ヴァリシアだけが落ち着き払っていた。
「アレク。行こう。
この国の“答え”は、おそらくここにある」
というわけで、俺たちは王国の謎に満ちたギルド――
《アンサーガールズ》
へ足を踏み入れることになるのだった。
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