尾行されているのに——ターゲットの青年は気づいていない……。
この“一方向の視線”が生む不思議な緊張感がたまりません。
外に出ることに慣れていない青年の、ぎこちない行動。
そのすぐ後ろで、淡々と、しかし妙に感情のこもった語りで追い続ける尾行者。
二人の距離は決して交わらない。
語り手の観察は細かいのに、どこか温度があって、ただの監視とも言い切れない。
読者の胸にも「これは一体どういう関係なのだろう?」という疑問がふくらんできます。
そして——
……おっと、ここから先はネタバレにつながるので口をつぐみます。
1200文字という短さとは思えないほど情景が浮かびあがる、読み終えると意外な温かさが残るショートショート。
青年の背中を追う その視線の正体は、あなた自身が確かめてみてください。