終末、あの空の上で。

@sora2020_e434

第一章

1-01 襲撃

一面に広がる銀世界、しんしんと降り積もる白い雪は、見た目こそ美しいが大量の放射性物質を含む危険な物質だった。


しかしこのような光景は、この世界ではどこにでもあるもので、幸運な者や裕福な人々を除き、ほとんどの人は放射線に体を侵されながら暮らしている。


そんなどこにでもあるような雪原を、3機の戦闘機が突っ切っていく。角ばった機体と重厚感のある大きな翼を持つその大型戦闘機は、戦前ではF-15と呼ばれていた。



『ネメシス隊、敵の警戒網まで、あと180秒です。各機、戦闘に備えてください。』


「ネメシス1了解」


『ネメシス2了解…』


『ネメシス3りょうか〜い!』



5つの黒い花弁を持つ花のエンブレムを持つその機体たちは、雪原を矢のように飛び去っていく。


そんな彼女たちの頭上では、一つの戦いが終わろうとしていた。


『エルシオン1よりホーク、こっちは終わった、全機撃墜だよー』


『ホーク了解、まだ行けますか?』


『んー、私はまだいけるけど…エルシオン2、どう?』


『私はー…うん、大丈夫そうかな』


『了解、では任せます。』



曇天の空に赤い花を咲かせて最後の敵が爆散する。その下手人の操る機体は、小柄かつ軽量、滑らかな機影。かつてF-16と呼ばれていたその翼には、6つの白い花弁を持つ花のエンブレムが描かれていた。


◇◇◇◇◇◇◇


「司令!戦闘機隊やられました!全滅です!」


「ぁんだとぉ?貴重なフレーMiG17を無駄にしやがって…」


「それよりも司令!敵機がこちらに向かっています!このままでは…!」


「そんな事言われんでもわかっとる!何のための防空火器だ⁉︎倉庫からパットーパトリオット引っ張り出せ!ツンカーツングースカもだ!」


「アイッサーキャプテン!」


「コマンダーだっつってんだろ!」



一方、攻撃を受けた側は、かなり混乱していた。

彼らの基本戦術は、今であればフラー、戦前ではMiG17と呼ばれた戦闘機の大量運用による物量作戦をメインとしていた。

もちろん、それだけでは対処しきれない敵には別の機体が差し向けられる手配であったのだが、少し前にその機体とパイロットを失っていたのだ。

ともあれ、何もしないわけにもいかないので、倉庫から錆の浮いた戦中の防空ミサイル発射機やら数年ぶりに動かす重自走対空機関砲やらを慌てて引っ張り出していた。人力で。



「パットーはとりあえず並べておけ!おいそこ!ツンカーの進路塞いでんぞ何考えてんだ死にてぇのか!」


「弾薬さっさと運べぇ!間に合わんぞ!」


「虎の子の戦中弾も出せ!敵はファルコF-16だぞ!」


「ん?何か見え——」



混乱した倉庫前で爆発が生じ、3機のイールF-15が侵入してくる。ツンカーは的外れな所へ鉛玉をばら撒き、パットーはロック前にミサイルを撃ち出す。それ以外にも、貴重なロケットランチャーなどを持った者も慌てて空へ向けるが、全く違う所へ発射していたり、弾頭を装填していなかったりと、酷い有様であった。

そして、司令部では——



「クソっ!やつらもう来やがった!」


「パットー、ツンカー共に配置についていません!」


「…仕方ない、バンカーを閉鎖しろ!我々が死ぬわけにはいかん!」


「しかし!…いえ、了解しました。バンカーハッチ閉じます」


司令部とされた施設、その戦車が3台は並べそうな大きさの出撃口や、爆撃機すら運用可能な規模の滑走路など、開口部がゆっくりと頑丈そうな扉で塞がれていく。

彼らは地上にいる同胞と、貴重な戦中兵器群の大半を捨て、自身の身を守ることにしたのだ。彼らの司令部は、戦前に作られた核シェルターであり、今も十分に性能を発揮していた。



「すまない…だが、我々が今ここで死ぬわけにはいかんのだ…祖国を再建するまでは…」


『ええ、分かっております。あの戦争の生き残りである司令は、ここで死ぬわけにはいきません。それにそうなれば、我々まで犬死にです。それだけはごめんですな』


「すまんが…後は頼む」


「ええ、お任せくだ——」


『敵機が司令部滑走路に!』


『何⁈阻止しろ!』


『無理です!既に中に——』




「っし!ギリギリセーフ!」


『それはいいけどさ、どうやって出るつもりなの?ハッチ閉まっちゃってるし、無線も繋がんないし』


「んぁー…まぁ何とかなるやろ、知らんけど」


『んもぅ、相変わらず適当だなぁ…』


「まあまあ、今まで何とかなってきたんだから、今回だって何とかなるなる」


『うーん…』



司令部滑走路に侵入した一機のイールは、そのまま速度を落として着陸、機体を静止させた。パイロットの2人は、機内に持ち込んだ短機関銃を展開、キャノピーを開けて機外へ出た。敵基地に梯子をかける地上員などいないので飛び降りたが。


「よっ…と」


「懐かしいなぁ…この感じ」


「だな、私にはあんまいい思い出ないけど」


「あはは、そうだろうね。でもまぁ、私にとっては実家みたいなものかな」


「私にしちゃ親の仇どもの棲家だがな…っと、お客さんだ」


「みたいだね。まぁどちらかと言えばお客さんは私たちだろうけど」


「それもそうだ…始めるぞ」


「了解ー」




——————————————


作者です。

初作品です。

脳内を書き出しました。

更新する気はあります。

でも基本的に無いものと考えてください。

どうかお手柔らかに。

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