2_怨念と怨念と、生き意地の汚い爺さん

「!! 感あり!! レーダーに感アリ!! なにかくるよ、ミリアム!!」


 !! モニターとコンソールを睨みつけていた、ドーガが叫ぶ!

 よっしゃあ! やったーよ! 誰かくる、これで助かりマンモセット!!


「やったぁ!! ナイスだねナイスだね、ナイスだよ! ドーガ、通信とって、お願い!!」


 あたしは、歓喜しちゃった! だってこれで助かるえ~!!


「オッケ!! あーヤバかった、このまんまじゃ俺ら、飢え死にして白骨化して。後世になって発見されるとこだったぜ。宇宙コエー!!」


 よっしゃー!! あとは返答待ち! コレで明日にはナッツシフォンロールにありつけるぞ~♬

 とか思ってると。


『そこの宇宙船!! すぐに停まれっ!! 言う事に抵抗せず従えばよし、さもなくば撃沈するぞっ!!』


 えげ? なんすか? この向こうの物騒な応答は?!


「拙いっ!! ミリアム、これはアレです! 救難信号が裏目に出ました!! この声は、いまこちらに近づいてきているものは!! 宇宙海賊に相違ないですわ!!」


 ふぉう!! ニューリアが絶叫した!!


「ちょっと、ドーガさん!! 敵の正確な数は?!」


 つづいて叫ぶニューリア!! この子、今回は一緒に居ない双子の妹ちゃんの温和さとはかけ離れて、鋭い性格してるなぁ。


「近くに船舶の船影無し!! 近づいてくる熱光源3つ!! このスピードとサイズから行くと……!! アームドアーマーだ!!」


 ふむ、そうなんか。でもそれなら大丈夫じゃん。

 こっちには腕っこきの、アームドアーマーパイロット。あの武道星系シャルシーダの王太子様がいるやん。


「ドーガくん‼ きみならあんな有象無象! 鎧袖一触にできるでしょ?!」


 という当然の発想をする、あたしミリアムさん。


「うん、できるよ。できるさ。でもさ、ただし!!」


 何かもったいぶるドーガ。


「君がバグらせた、シェシェ・バールしかないんだよ、現状機体がさ!!」


 カーン!! そうだった!! アームドアーマーのヘルプAIに『納豆と山芋の粘り気をオクラで割ると数値幾ら?』とかトンチキな質問するんじゃなかった!!


   * * *


「お頭! あのヨット、なんすか? クソ高そうじゃないですか? 座礁してますけど!!」


 ハッ! 俺の二人だけの手下のうちの、イガペーがそんなことをいいやがる。クソ無能め、解んねえのか? だから襲って奪うんだろが!!


「ラージット頭目。いい金が稼げそうだ。アンタについててよかったぜ」


 そう言いやがるのは、もう一人の手下。星間大学の名門出てるくせに

『海賊ってのが。自由の象徴だと思いましてね』

とか変な思想持って、俺の手下になった、フォーデン。何考えてるだかわからんが、役には立つ奴だから。手下にしてやってる。


「へっ!! これで久しぶりに、牛の脂身たっぷりのT ボーンステーキが食えるってもんだ。涎が出るぜ……。グアハハハハハ!!」


 俺はそう嘯いた。ケッ!! 富も名声も野心も。食いつぶすこの世に、食い気以外の快なんて残っているものか!!


「いくぞ、イガペー、フォーデン。あの宇宙ヨット、略奪するぞ!!」


 そういって、俺は愛機のアームドアーマー『ゼル・ゼル』の推進機を。


 思いっきり吹かした!!

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